2015/10/10

【現場最前線】浸水被害を軽減せよ! 富山市で「20年ぶりのシールド工事」進む


 佐藤工業・前田建設JVが、富山市で約20年ぶりとなるシールド工事を進めている。市下水道局が事業者で日本下水道事業団が発注した「富山市松川貯留管建設工事」は、集中豪雨などによる浸水被害の軽減、市街地を流れる松川の水質保全が目的だ。ゲリラ豪雨が発生すると市街地は水浸しになり、雨水は一部の下水とともに松川に放流される。新たに貯留管を整備し、浸水対策や水質保全対策などを担う複数の導水管と接続することで、25mプール53杯分に相当する水の抜け道を作る。市民の安全・安心に直結するインフラ工事の現場を取材した。

 この工事は、泥土圧シールドで直径約6m、長さ1069mを掘進してトンネルを構築した後、「その2工事」として二次覆工や立坑を施工する。二次覆工には、トンネル内中央に中壁を構築し、内空を左右に分割する有筋区間が含まれる。
 シールド工事では、立坑との接続部分や曲線部などにスチールセグメントを採用。RCセグメントにも「総合評価入札でスチールファイバーによる補強を提案し、耐久性を高めている」(佐藤工業JVの宮崎康生所長)。
 一方、シールド機にはセグメントの変形を防ぐ「移動式テール内形状保持装置(TKS)」を導入した。シールド機内側のエアーゴムが膨らみ、セグメントを円形状に保持しながらスライドする仕組みだ。このほか8つの土圧計を設置し、土圧分布を可視化して切羽の安定を確認しながら施工を進めた。
 現在は既にシールド工事を終え、二次覆工や立坑などの施工を進めている。

一部にスチールセグメントを採用

 二次覆工でのヤマ場は、トンネル内中央に中壁を構築し、内空を左右に分割する有筋区間だ。トンネル内に鉄筋を密に張り巡らせるため、コンクリートの打設精度が問われる。このため底面のインバートを除き、高流動コンクリートを採用することで品質を確保する。
 安全確保に向け、作業エリア全体は無線LANでネットワーク化し、ゲリラ豪雨やガスの発生などに備えている。
 市街地の現場に特有な課題もある。ストックヤードを兼ねる発進立坑部の防音ハウスは、面積が限られている上、景観条例によって高さも12.5mに制限されている。セグメント置き場のスペースが限られるため、綿密な工程計画を立てた上で施工に臨んだ。それが功を奏し、「幸いトラブルもなく、順調に進んだ」(宮崎所長)。一方、立坑の施工では道路車線の一部を止めながらの作業となるため、昼夜作業を進めている。「雪の影響を受けないよう、明かり工事をなるべく早く進めたい」(同)。
 完成すると33%の地域で浸水被害が解消され、67%の地域で被害が軽減される見通し。安全・安心の実現に向け、市民からの大きな期待を背負った現場だ。
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