2013/10/20

【大学整備最前線-1-】都市同様、全員参画で整備! 立命館大

茨木新キャンパスの完成イメージ
人口の減少や少子高齢化が進む中、大学を取り巻く環境は厳しさを増している。し烈な大学間競争に打ち勝つため、魅力的なキャンパス整備を重視する大学は多い。都心回帰の流れに加え、付属校や学部新設の動きも活発化している。関西の主要な大学に対して、施設整備の現状や今後の構想などを聞いた。



◇13年度内に基本計画たたき台

 立命館(京都市中京区)は、2012年にキャンパス計画室を新たに設け、初代室長に及川清昭理工学部教授が就いた。中長期を見据えたキャンパスマスタープランの策定を進めており、及川室長は「関係する委員会や部署と議論しながら、13年度中におおまかなたたき台を示したい」と見据える。「大学は都市。住民参加型のまちづくりのように、学生や職員が参画するキャンパス整備を目指す」と話す。
 これまで必要に応じて個別に判断し、施設を整備してきた立命館だが、「各キャンパスの課題を踏まえた全体計画が必要」との認識から、10年に委員会を立ち上げ、12年11月にキャンパス計画室を新設した。総合企画部や管財課など関係部署と連携しながら、キャンパス計画の策定に取り組む。


 

及川清昭理工学部教授
◇3キャンパス主体に

 立命館大学は、衣笠キャンパス(京都市北区)、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)、新たに建設中の大阪茨木新キャンパス(大阪府茨木市)の3キャンパスを主体に展開する。
 衣笠キャンパスは「空間の骨格が明確でないことに加えて、周囲のコンテクストを積極的に取り入れ、より京都らしいキャンパスに変える必要性がある」と課題を認識する。びわこ・くさつキャンパスは、リゾーニングを重視する。「学部ごとの施設の再編成を進めるとともに、コンパクト化する。学生が集える緑地の整備も課題」と捉える。
 これらの課題を踏まえて、文部科学省の指針に基づいたキャンパスマスタープランの策定を進めている。同プランは、長期を見据えたフレームワークプランと、今後5年程度を対象とするアクションプランで構成する。「フレームワークプランは25-30年までをターゲットに考えている」。文科省の指針に基づく同プランは国立大学の一部などで策定済みだが、私立大学で策定した事例は「これまで数少なかった」という。
 立命館は大阪茨木を始め、衣笠、びわこ・くさつの各キャンパスで積極的に施設の整備を進めてきた。「現在は建設ラッシュの状況にあり、15年に大部分の施設が完成する」。設計と施工は分け、施工は建築一式として発注することを基本にする。「現在は建物ごとに審査会を開き、建設企業を選定している」。指名業者数は建物の特徴により変えており、「(規模の大きい)大阪茨木新キャンパスは十数社から2段階選抜によって選んだ」と振り返る。

◇大学は都市

 「大学は都市」が持論の及川室長だが、一方で「大学は毎年新しい学生を迎え入れる。住民とともに歳を重ねる都市とは、そこに大きな違いがある」と話す。そのため、「いつでも新鮮な印象を受けるアンチエイジングなキャンパスであるべき」と考える。また、地域に開かれたキャンパスのあり方も模索する。「迷惑施設として地域に閉じていてはいけない。都市の一部としてどうあるべきか、重要なテーマ」と位置付ける。特に大阪茨木新キャンパスは「今後のモデルケースになり得る」とし、多様な試みに取り組んでいる。
 最後に施工者と設計者への期待を聞いた。施工者に対しては「とにかく安全が第一。建て替え工事は、騒音や粉塵、通行の配慮など学生生活に与える工事の影響を抑えることも重視している」。設計者には「これまで大学としてその施設を整備し、何がしたいか見えにくかった」と認める。策定中のキャンパスマスタープランを通じて「大学としての建物の位置付けを理解してもらえれば」と期待している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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