2013/10/22

【現場最前線】仙台市の汚水処理担う南蒲生浄化センターを短期復旧

東北地方最大の106万人が暮らす仙台市。その汚水処理の約7割を担う南蒲生浄化センターは、津波で構造物の多くが破壊され、設備の冠水などにより機能を失った。仙台市から復旧事業を受託した日本下水道事業団(JS)は、水処理施設を全面改築し、耐津波対策のモデル処理場としてリニューアルを進めている。そのメーンとなる災害復旧建設工事その9を担当するフジタ・鴻池組・丸本組・後藤工業・皆成建設JV(大西基成所長、フジタ)を筆頭に、1日当たり43万m3以上を処理する国内有数の規模の浄化センターをわずか3年半で復旧させるという前代未聞の工事に挑んでいる。



◇20万m3のコンクリ打設


門型クレーン
計画によると、水処理施設は、最初沈殿池と最終沈殿池が2階槽、反応タンクは深槽に改築することで、震災と同規模の津波高(TP=東京湾平均海面、10.4m)にも耐える施設にする。約6haの広大な現場には、これらの構造物を構築するための大規模な仮設が築かれ、約20万m3に及ぶコンクリートの打設が進む。
 昨年9月に本格着工したが、地元企業に別途発注された解体工事の工期が11月から3月に延長されたことや基礎地盤の改良が大幅に増えたことで、躯体構築に着手できたのはことし4月上旬だった。大西所長は「受注当初から、解体工事を早く完了させることが、全体工程短縮のポイントと考え、それに関係する仮設工法の変更に全力を注いだ」と振り返る。
 週に1度開かれる仙台市、JSとの工程調整会議の場で工期短縮に資する提案を次々と打ち出した。「設計変更を重ねた結果、遅れを取り戻しつつある。コストをかけずに工期を短縮する提案が通りやすく、作業所長としてやりがいのある現場だ」と語る。

◇ウルトラディープウェル工法


コンクリ打設は20万立方メートルに及ぶ
着工から仮設構築完了までの設計変更は、多岐にわたる。例えば地下水対策では、湧水をポンプで排水する「釜場排水工法」から真空ポンプを利用した強制排水で一気に水位を下げる「ウルトラディープウェル工法」に変更。鋼矢板打設時に支障となる地中埋設管の探査と撤去は、津波で前施工時の設計図が流されたため難航が予想されたが、「4-10mほど敷地を東西にずらすことで、撤去する埋設管を大幅に減らせた」という。鋼矢板の土留めも「アイランド工法」と「グラウンドアンカー」を併用し、数量を64%も減らした。
 また、設計時から2倍にボリュームが膨らんだ基礎地盤改良工も当初の「バックホウ混合」から「パワーブレンダー工法」に、鉄筋の溶接も「ガス圧接」から「機械式継手」へと変更し、場内には鉄筋加工専用ヤードを設けている。

◇全国から職人集結



現場の看板
5月中旬にはコンクリートの打設が本格化した。「2階槽や深槽の施設の構築は、平面に比べて養生期間を含む作業時間が長くなるため、簡単には工期を短縮できず、作業員の手に頼らざるを得ない」という。所長自らが発案した「全国から選ばれた職人集団“見せよプロ根性"東北復興のために」のスローガンのもと、北は北海道、南は沖縄から集まった職人300人の持つ高い技術に信頼を寄せる。大西所長は「東日本大震災以降、復旧・復興で役立ちたいと考えていた中で、これだけの規模の現場を任せてもらえることは光栄だ。全員一丸となって1日も早い復旧を成し遂げたい」と力を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 【震災復興フォーラム】東北4県「被災地の今」を伝え、継続的支援呼び掛け 2/10@東京  青森、岩手、宮城、福島の4県でつくる、東北4県・東日本大震災復興フォーラム実行委員会は、2月10日に「東北4県・東日本大震災復興フォーラムin東京」を東京都千代田区の有楽町朝日ホールで開く。東京都が共催する。  震災から5年を迎えるに当たり、首都圏において被災地域の復興状況や取り組みについて情報発信を行い、震災の風化防止、風評払拭と継続的な支援を呼び掛けるのが狙い。 フォーラムでは宮城県気仙沼市出身のフリーアナウンサー・生島ヒロシさんの… Read More
  • 【アジア航測】空中写真による東日本大震災・被災地モニタリング 15年9、10月撮影分公開  アジア航測は、東日本大震災被災地の2015年9、10月に撮影した航空写真を同社ホームページで公開した。   発災直後に緊急航空写真撮影と車両での360度撮影を実施し、その後も定期的に記録してきた。15年の撮影は、9月12日、15日、28日、10月18日に実施し、計画していた24コースの撮影を完了した。撮影枚数は527枚に及ぶ。 空中写真による東日本大震災の被災地モニタリングは、復興事業や自然再生事業、学術研究など多くの分野で活用してもら… Read More
  • 【青木茂建築工房】耐震性向上、内外装と設備一新で蘇る! 東北初のリファイニング建築完成  東北地方初のリファイニング(再生)建築として、青木茂建築工房(大分市、青木茂代表取締役)が設計・監理を担当した(仮称)佐藤ビルリファイニング工事(仙台市青葉区)が完成した。鉄建が施工した。1969年に同区花京院に建てられた同ビルの規模はRC造5階建て延べ965㎡。東日本大震災で半壊認定を受けた事務所付き賃貸共同住宅を改修し、RC一部S造5階建て延べ1008㎡の賃貸共同住宅として再生した。  既存不適格建物のため、近隣関係者からの同意や仙… Read More
  • 【東北スマートコミュニティ】「持続可能な地方創生」テーマにセミナー開催 1/26、参加無料  東北地方スマートコミュニティ推進実行委員会は26日、仙台市青葉区のパレス宮城野でスマートコミュニティ構築セミナー「持続可能な地方創生を目指して~再生可能エネルギーを活用したまちづくり~」を開く。建設コンサルタンツ協会東北支部が後援、日刊建設通信新聞社などが協力する。  エネルギーと交通、情報インフラの統合的な管理および効率的な利用により実現する新たな社会システムであるスマートコミュニティ。東日本大震災を契機に高まった安定的なエネルギー供… Read More
  • 【復興特別版】気仙沼市の魚市場再建・増築が起工 高度衛生管理対応で水産業復興を目指す  宮城県気仙沼市が主産業である水産業の復興と活性化に向けて整備する(仮称)市魚市場CD棟・E棟の起工式が7日、現地で行われた。3月にも着工し、2017年3月の完成を目指す。設計はユニバァサル設計、施工(建築・設備一括)は大成建設・小野良組JVが担当する。  東日本大震災の津波で被災した魚市場のうち、北側のAとB棟は、14年度に復旧が完了した。今回は残る南側のCD棟を再建するとともに、新たにE棟を建設する。ともに高度衛生管理に対応する次世代… Read More

0 コメント :

コメントを投稿