2013/10/20

【現場最前線】“土木の最先端"ぎっしり詰め合わせ! 横浜環状北線 

北線の路線図
首都高速道路会社が2016年度の完成を目指し、全長約8.2㎞にわたり工事を進めている「横浜環状北線」。第三京浜の港北インターチェンジ(IC)から、首都高横浜羽田線の生麦ジャンクション(JCT)までをリンクする横浜市の新たな交通ネットワークだ。この北線では、JR線を跨ぐ900t桁の夜間一括架設を始め、2500tのトラス橋のスライド、5.5㎞という超長距離シールド工事など、国内最先端の建設技術が惜しみなく使われている。これらの最先端技術を紹介する。



9月26日未明、新生麦出入口付近でJR6線を跨ぐ高架橋桁の一括架設が行われた。この工事は、鹿島・前田・京急JVが担当する「横浜環状北線鉄道交差部新設工事」。

◇25分間の空中移動

 JR東日本の横須賀線、東海道線、京浜東北線という首都圏の大動脈の直上を、重さ900tの巨大構造物が、約25分という短時間で61mにわたって横断した。今回架設した桁は、完成後に本線内回りの桁となるが、この場所で架設する予定の桁は合計で7本となる。
 このような一括架設作業は、今回が2度目だ。ことし2月、本線外回り線の桁を90mにわたって同様の方法で一括架設した。このときは重さ1000tを超えるものを、JR6線に加えて京浜急行線の2本を含む8線もの送り出しとなった。
 桁の製作も子安台山腹のトンネル出口に作業構台を設置して地組みし、桁の移動にはモーターを搭載した自走台車と、小型のベルトコンベヤーのようなエンドレス装置で毎分2.5mの速度で送り出した。
 ただ直線で送り出すのではなく、道路線形に合わせた曲線の動きが必要だ。自走台車の内輪と外輪の移動距離の違いをインバーターで制御し、内輪を遅く、外輪を速めに回して曲線送り出しを実現した。
 今後この工事では、さらに国道15号とJR東海道貨物線2線も跨ぎ、生麦JCTへと続く高架橋部へと接続する。
 この桁は、来年の8月ごろを目標に架設完了させる。工期は16年秋まで。

◇2500t桁を4日で移動


「日本最大の単径間ダブルデッキトラス橋」。横浜市都筑区の大隈川で、長さ120m、重さ2450tもの桁を、3月初旬に実質4日間で110mも移動させる工事が行われた。これほどの物量が、前後方向上下左右に3次元で動き回った。
 この橋はYK13工区と呼ばれ、大隈川と鶴見川の合流地点にあり、港北JCTと新横浜出入口を結ぶ高架橋部分だ。支間長は155.5mある。
 川の西岸で組み上げた主桁を、東側で待ち受ける桁まで100m以上スライドさせて、1つの桁に合体させ、その後東側から桁を降下してトンネルへのアプローチ部にすり付けるという離れ業を、2月26日から3月2日までのわずか5日間で完遂した。
 スライドは、ガイド役を果たすH鋼上に設置された橋桁に、テフロンや金属板をはさんで摩擦抵抗を減らし、H鋼クランプジャッキとスライディングシップ・ジャッキを併用して、1mずつスライドを繰り返した。1日の移動量は約30mにもなった。
 施工は、IHIインフラシステム・駒井ハルテックJVが担当。工期は14年4月までの予定だ。

◇全長5.5㌔のシールド



鉄道営業線を跨ぐ複雑なランプ、超巨大トラス橋に続いて、長さ5.5㎞、外径12.49mという長大シールド2本も掘進している。さらにこのシールドトンネルは、地中で分岐合流する馬場出入口の施工もトピックだといえる。
 北線は、大隈川を越えた新横浜入口から地中に入り、このトンネルを通って子安台換気所まで地下を走る。途中、馬場出入口として4カ所の分岐合流部を非開削で構築する。 道路トンネルを非開削で分岐合流する工事は、建設中の首都高速中央環状品川線でも行われているが、ここでは「大口径パイプルーフ」による拡幅が採用された。
 施工手順は、あらかじめ構築した本線シールドから、パイプを推進方式で発進させる基地を、拡大シールド工法で構築する。本線よりひとまわり大きいリング状の基地から、直径1.2mのパイプを軸方向へ推進し、パイプから薬液注入して止水する。その後本線のセグメントを外し、パイプルーフの内部を少しずつ掘削してラッパ状の複雑な形でトンネルを広げる。確保した内部空間に別のランプシールドが到達する仕組みだ。
 この「横浜環状北線シールドトンネル工事」は、大林・奥村・西武JVが担当している。
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