積水化学工業とミズノが、陸上競技場のトラック(競走路)を冷却する新たなシステムの開発を共同で進めている。両社はシステム開発を皮切りに、今後拡大が予想される国内のスポーツ施設の新設・改修や運営ビジネスの分野に共同して取り組むという。提携の背景にあるものは何か。
国内スポーツ施設の新設・改修工事の共同受注を目的に、業務提携を結んだのは6月。公共や民間のスポーツ施設の受注を目的とした営業活動や調査・診断、設計・ 施工、運営維持管理、スポーツ施設向けの製品・システムの研究開発--などを共同で推進することが狙い。
その初弾事業となるのが、「スポーツサーフェイス冷却システム」の共同開発・受注だ。スポーツサーフェイスとは、陸上トラックなどの表面を覆う舗装材のこと。夏場のスポーツサーフェイスの表面温度は、60度を超えることもある。例えば散水により気化熱で温度を下げる方法は効果的な対策の1つだが、水をまくことによってトラックが滑ったり、場合によっては湿度が上昇し熱中症になる可能性もあったりと、アスリートの競技パフォーマンスに悪影響をおよぼす可能性もある。
ミズノ・グローバルイクイップメントプロダクト部ライフスタイル企画課の土肥弘一氏によると、スポーツサーフェイスの熱対策として赤外線を反射する、あるいは熱を吸収しにくい素材にするといった技術はこれまでもあったが、熱を地中に逃すという発想はなかった。調べてみると、スポーツサーフェイス表面から25cmくらいの深さまで太陽熱が届いていることが分かった。
「下を冷却すれば、表面温度も下げることができるのでは」(土肥氏)。これに対応するのが、積水化学工業の配管技術と地中熱・下水熱などの自然エネルギーを活用したシステムだ。サーフェイス層とアスファルト舗装の間に設けられた「冷却層」にはパイプが通され、パイプ中を循環する水によって熱を下げるという仕組みだ。
検証を進めた結果、表面の温度を約15度下げる効果が認められたという。「陸上トラックだけでなく、レジャー施設などにも応用できる」(同)と汎用性にも期待する。同システムは15年度内の発売が目標だ。
両社が狙うのが、PPPなどスポーツ施設の包括的システム事業の受注だ。運動施設が大規模災害時の避難所としても活用される点に着目。スポーツサーフェイス冷却システムのような運動環境を快適化する技術に加え、施設の耐震診断・改修、地中熱や下水熱などの自然エネルギー活用、飲料水貯留システムやプール・雨水の浄化システム、災害用トイレなど防災拠点としての機能を高めるシステム--と組み合わせ、付加価値の高い運動施設として発注者側に提案する。
メーカーとしての実績に加え、全国で700カ所を超えるスポーツ施設を運営しているミズノ。インフラ関連以外に、近年は防災分野での技術開発にも力を入れている積水化学工業。両社が得意分野を生かすことで「快適で人にやさしく、災害にも強いスポーツ環境づくりにつなげたい」(積水化学工業環境・ライフラインカンパニーの江口尚志住宅システム事業部住宅システムビジネスユニット技術開発部長)考えだ。
2019年のラグビーワールドカップ、20年には東京五輪と、日本国内ではスポーツ関連の世界的イベントが控えている。加えて国内に現在約5万カ所あるとされるスポーツ施設のストック、150億円とも言われる市場規模をにらみ、両社で「シェア10%の獲得を目指す」(ミズノ・土肥氏)という。
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国内スポーツ施設の新設・改修工事の共同受注を目的に、業務提携を結んだのは6月。公共や民間のスポーツ施設の受注を目的とした営業活動や調査・診断、設計・ 施工、運営維持管理、スポーツ施設向けの製品・システムの研究開発--などを共同で推進することが狙い。
その初弾事業となるのが、「スポーツサーフェイス冷却システム」の共同開発・受注だ。スポーツサーフェイスとは、陸上トラックなどの表面を覆う舗装材のこと。夏場のスポーツサーフェイスの表面温度は、60度を超えることもある。例えば散水により気化熱で温度を下げる方法は効果的な対策の1つだが、水をまくことによってトラックが滑ったり、場合によっては湿度が上昇し熱中症になる可能性もあったりと、アスリートの競技パフォーマンスに悪影響をおよぼす可能性もある。
ミズノ・グローバルイクイップメントプロダクト部ライフスタイル企画課の土肥弘一氏によると、スポーツサーフェイスの熱対策として赤外線を反射する、あるいは熱を吸収しにくい素材にするといった技術はこれまでもあったが、熱を地中に逃すという発想はなかった。調べてみると、スポーツサーフェイス表面から25cmくらいの深さまで太陽熱が届いていることが分かった。
「下を冷却すれば、表面温度も下げることができるのでは」(土肥氏)。これに対応するのが、積水化学工業の配管技術と地中熱・下水熱などの自然エネルギーを活用したシステムだ。サーフェイス層とアスファルト舗装の間に設けられた「冷却層」にはパイプが通され、パイプ中を循環する水によって熱を下げるという仕組みだ。
検証を進めた結果、表面の温度を約15度下げる効果が認められたという。「陸上トラックだけでなく、レジャー施設などにも応用できる」(同)と汎用性にも期待する。同システムは15年度内の発売が目標だ。
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メーカーとしての実績に加え、全国で700カ所を超えるスポーツ施設を運営しているミズノ。インフラ関連以外に、近年は防災分野での技術開発にも力を入れている積水化学工業。両社が得意分野を生かすことで「快適で人にやさしく、災害にも強いスポーツ環境づくりにつなげたい」(積水化学工業環境・ライフラインカンパニーの江口尚志住宅システム事業部住宅システムビジネスユニット技術開発部長)考えだ。
2019年のラグビーワールドカップ、20年には東京五輪と、日本国内ではスポーツ関連の世界的イベントが控えている。加えて国内に現在約5万カ所あるとされるスポーツ施設のストック、150億円とも言われる市場規模をにらみ、両社で「シェア10%の獲得を目指す」(ミズノ・土肥氏)という。
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