2016/06/11

【現場最前線】供用から50年!高架構造に架け替え26年度末完成 高速1号羽田線更新


 次の100年も走り続ける道へ--。首都高速道路会社は、1962年の開通時から半世紀を超えて日本経済の動脈の役割を担ってきた首都高速道路で初の大規模更新事業を計画。その第1弾となる、高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業の工事がいよいよ本格化する。長期的な耐久性や将来の維持管理性を確保するため、京浜運河や並行する東京モノレールから一定の距離を確保しつつ、高架構造に架け替える。工事中の影響を軽減するため迂回路を設置するほか、安全性の向上や現場工程の短縮策を導入し、2026年度末の完成を目指す。総事業費は986億円。

 東品川桟橋と鮫洲埋立部は、品川区東品川2丁目~東大井1丁目間の約1900mで、翌年に東京五輪開催を控えた1963年に供用。東京西局プロジェクト本部の林寛之本部長は「モノレールと陸地に挟まれた狭い運河内で、1日7万台の利用がある1号羽田線の交通を確保しながらの難工事」と説明し、「最終完成までは10年を見込むが、4年後の東京五輪開催時には古い路線を使わずに済むよう工程管理して工事を進めていく」考えだ。

供用当時の全景(提供:首都高速道路)

 昨年8月に契約し、実施設計と施工は大林組・清水建設・三井住友建設・東亜建設工業・青木あすなろ建設・川田工業・東京鉄骨橋梁・MMB・宮地エンジニアリングJVで担当。運河内で工事用道路などの準備工事が進む。8日からは大井ジャンクション(JCT)を約40カ月間通行止めにし、本格着工する。
 工事は、海面ギリギリに建設されている高速道路を約5-20mの高架構造に架け替える。道路幅員も17mから18.2mに変更する。

運河内に整備中の工事用道路。上部に迂回路を設置する

 東品川桟橋部は、長さ1200m、幅員17m(4車線)で、構造は下部工がプレストレストコンクリート(PC)杭+セルラー(円形鋼矢板)、上部工がRC桟橋。更新は、上部工が鋼6径間連続鈑桁橋4橋、鋼3径間連続鈑桁橋1橋を計画。維持管理性を確保するため恒久足場を設置する。現場工程を短縮するため、工場製作のプレキャスト床版や鋼製橋脚を採用。周辺構造物への影響を考慮して基礎寸法が縮小できる柱状体基礎や、水中での施工実績が多く、仮締め切り兼用とすることで現場工程の短縮が可能な鋼管矢板基礎を採用している。
 京浜運河に架かる大井水道管橋のうち、1号羽田線を跨ぐ東品川側をトラス橋に架け替える。更新後の羽田線は同橋を跨ぐ形となるという。

更新範囲全景。東品川2丁目(写真右)~東大井1丁目(左)間の約1.9㎞が対象
(提供:首都高速道路)

 また、鮫洲埋立部は現在、タブロッド式鋼矢板土留め構造。更新工事は、路面かさ上げ構造で延長約460m。現場工程を短縮するため、工場製作のプレキャストU型ボックス構造や、大口径の地盤改良工法を採用。周辺構造物への影響を低減するため、噴射型の地盤改良工法を導入する。海際での耐久性を確保するため、エポキシ樹脂鉄筋などを採用している。
 迂回路は、連続鈑桁橋で延長1830m。周辺への圧迫感を低減するため杭本数を削減、煩雑感を排除できるパイプベント構造を計画。周辺構造物への影響を低減するため、回転杭を採用する。桁下空間を確保し工事用道路としての活用などを実現させる。「20年の東京五輪開催時には、迂回路に交通を切り替えて対応する」考えだ。

4段階の施工ステップ

 工事は「4段階で計画している」(齋藤一成同本部品川工事事務所工事長)。現在は工事用道路・迂回路を設置する「ステップ1」で、17年夏から秋に本格化する。20年の東京五輪までの「同2」で現上り線を迂回路に切り替えた後に、上り線をつくり替える。「ステップ3前までの段階で20年開催の東京五輪を迎える」と説明。「同3」では五輪後から23年半ばまでに、完成した上り線に現下り線を切り替え、大井JCTは迂回路に暫定的に接続させる。その上で、下り線の更新に移る。「同4」は23年半ばから26年度末を予定。上下線の交通を更新線に切り替え、仮設構造物などを撤去して完成させる。
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