2016/06/19

【講演】職人の仕事は「知恵と執念」持ったものづくり 宮大工棟梁 小川三夫氏


 中央工学校は、東京都北区の同校STEPホールに宮大工の棟梁・小川三夫氏を招いて講演会「宮大工の技と技術」を開いた。小川氏は職人の仕事について「利口ではなれぬ、バカではなれぬ、中途半端はなおなれぬ」という口伝を木造建築科の生徒たちに紹介し、知識でなく、知恵を働かせて執念を持ったものづくりをしなければ職人になることはできないと語った。

 特に「執念のものづくり」の重要性を強調し、「工作道具のものづくりは完成すればそこで終わり。執念があれば終わった後にも後悔が残り、それが次につながっていく」と述べた。また「執念のものづくりは教えることはできない」ものとし、徒弟として下積みを重ね、「つらく、厳しい仕事であるほど執念のものづくりができる」と語った。道具の使い方についても、「道具はものをつくる指の延長であり、手の動きを失った技術からは職人の技は生まれない」と指摘し、単に電気道具に頼るよりも「手道具を十分に学び、原理が分かって電気道具を使えば120%の性能を発揮できる」と語った。
 徒弟の生活については「自由になる時間は全くないが、本当に自由のない生活に追い込まれると自分の個性が分かる」とし、良い師匠のもとに付き、自分自身を捨てて師匠に合わせた生活を送ることが職人として重要な要素になると指摘した。「修行とは親方を外から見るのではなく、親方になりきること。自分自身を捨て、親方と同じように黒いカラスも白く見えるように努力しなければならない。親方を乗り越える努力は自分が独立してからするべきだ」とも。
 また、ものづくりと向き合う心構えとして、「下手は下手なりに精一杯やっておくことが重要」とし、「ものをつくるということは形として残るということ。次の世代に笑われるような嘘偽りのあるものを残してはいけない」と呼び掛けた。その上で、職人の仕事は上手い下手が一目で分かるからこそ「本物は時代を超えて残る。真面目でひたむきにやらなければ人の心を打つような仕事はできない」と強く訴えた。
 講演後には槍鉋(やりがんな)を実演し、職人として求められる技術水準の高さを生徒たちに伝えた。
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