2016/06/29

【新潟県と長岡技科大】世界初!! 下水熱と消化ガスで植物栽培 わさびの人口栽培も可能に?


 新潟県と長岡技術科学大学が下水道技術の相互協力に関する包括的な覚書に基づいて進める、下水道資源・エネルギーを活用した植物栽培の実証実験施設の見学会が27日、新潟市西区の西川流域下水道西川浄水センターで開かれた。下水処理で発生する下水熱と消化ガスを水草などの生育に生かすという世界初の試みに、多くの関係者が足を運んだ=写真。

 冒頭、新潟県土木部の冨田陽子都市局長があいさつ。実証実験の成果が「新たな環境ビジネスとして、県内外に広がっていくことを期待している」と話した。長岡技科大の東信彦学長も「最先端の再生可能エネルギー技術を駆使した食糧生産技術として、新潟県の活性化に寄与できれば」と述べた。
 続いて、今回のプロジェクトを支援する国土交通省水管理・国土保全局の加藤裕之下水道部下水道事業課長、日本下水道新技術機構の岡久宏史専務理事が来賓として祝辞を寄せた。岡久専務理事は、国交省下水道部長時代に東亜グラウト工業の大岡伸吉相談役から受けた提案を振り返りながら、「下水道資源と農業を有機的に結び付けた画期的かつ革新的な取り組み」と強調した。
 長岡技科大の姫野修司准教授が事業概要を説明した後、参加者は同センター敷地内にある栽培環境制御型ハウスへ向かった。
 実証実験は同ハウスが完成した13日から始めている。下水熱回収装置(熱源槽とヒートポンプ)で水処理設備の処理水を冷水と温水に変え、空調(ファンコイルユニット)利用するとともに、冷水の一部を植栽用に使う。汚泥処理で生じる消化ガスは分離装置でCO2のみを取り出し、植物の光合成を促す。
 下水熱回収装置と二酸化炭素分離装置の電力は消化ガスを燃料とするバイオガス発電機でまかなう。バイオガス発電機で生じる温水と排気(CO2)も転用する。
 特に長期的な人工栽培が困難な梅花藻とわさびは「(実証実験の)シンボリックな植物」(姫野教授)に位置付けており、「栽培環境の維持に不可欠な冷水の循環利用が今後のポイントになる」とみている。最終的には下水道資源・エネルギーでの植物生産を通じ、「下水道資源の新たな価値を創出したい」考えだ。
 2016年度は各施設の機能発現効果、システム全体のエネルギー効率などを評価した上で、17年度以降に冷水の完全循環利用に向けた再生水製造技術の開発を進める方針だ。
 実証実験には新潟県立植物園、新潟県農業総合研究所、東亜グラウト工業(下水熱による温冷熱回収)、積水化学工業(環境制御型ハウスの構築)、大原鉄工所(発電機での熱、CO2の供給)、高砂熱学工業(植物栽培環境のエネルギー評価)が共同研究者として参画している。
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