期間中最多の6セッションが集中する2日目は、計25編の論文発表とグループ討議、セミナーなどが行われた。会議終了後に関係者のレセプションが開かれることもあり、ポスターセッションの会場は大勢の参加者でにぎわった=写真。
日本調査団の1人にこれまでの感想をたずねたところ、「さまざまな気候変動などに対応し、改良を加えてきたため、舗装の品ぞろえや品質は日本の方が上だと思う」と日本の技術力に自信をのぞかせた。
とはいえ、日本の持つ優位性がいつまでも安泰というわけではない。ポスターセッションで欧州のある大学の論文に熱心に見入っていた日本調査団員は、「日本では民間主体になっている基礎的な研究開発が、各国では大学レベルで行われている」と指摘。「日本では土木工学科の志願者が減り、道路舗装関係の専門的な教育の場はさらに減少傾向にある」と危機感を示しながら、学術レベルでの基礎研究の重要性を再認識する場面もあった。
世界のいたるところで整備され、人びとの生活に密着し続けている道路は、最古の社会インフラの1つだ。ひとたび寸断されれば、社会や経済に大きなダメージを与える道路の適切な管理は、世界共通の課題でもある。
適切な維持管理には工事への投資だけではなく、高度な技術や将来につながる研究開発への投資が重要であることは言うまでもない。日本の舗装技術は世界トップレベルにあるとはいえ、少子高齢化に伴う労働力の減少や将来の担い手不足といった状況を考慮すれば、中長期的に国際的なプレゼンスを保ち続けることは難しい。
道路舗装の分野で今後も国際競争力を維持、向上するには、「次につなぐ」ための教育への投資が必要不可欠であり、速やかに手を打たなければならない喫緊の課題でもある。
ポスターセッションでは、混合物の性状やリサイクル、メンテナンス、健康・安全・環境分野など164編の論文が発表され、各国の参加者が出展者に熱心に質問をしていた。セッション会場を精力的に歩き回る団員に聞くと、「改質アスファルト関係の展示が多い」という。
ポリマーなどを加えて石油アスファルトの性状を改善した改質アスファルトは、アスファルト混合物の耐久性能を向上させ、より丈夫な舗装をつくることができる。日本では1960年代から本格採用が始まり、モータリゼーションの発達とともにさまざまな改良が加えられ、バリエーションが広がった。アスファルト舗装要綱の改定で一般材料として位置付けられたことで普及が拡大し、現在は、日本の高速道路や国道のほとんどで採用されている。
小ホールでのセッション |
欧州発の技術として欧米で先行導入されていたが、ある団員は、普及度合やバリエーションの面で「既に追い越している」と感想を語った。
別の団員はスペインの大学が発表していた、アスファルト舗装の疲労とひび割れを検証する機器の論文に注目。「より実動に近い結果が得られる優れもの」と高く評価していた。
日本では産官学連携による研究開発が活発に実施されているが、着実に成果が上がる研究課題でないと補助金が出にくいという話を聞いたことがある。利益を最重視する民間と成果にこだわる官との連携では、学側の斬新な発想はスポイルされかねない。
革新的なアイデアを生むためには、学の地道な取り組みを支援する仕組みと基礎研究の成果を長い目で見守ることが許される環境づくりこそが必要なのかもしれない。
オープニングセッションで会議主催者が強調した「確実な研究開発への投資」は、道路資産の有効活用を支え続ける、“絶え間ないイノベーション”を導き出すための絶対条件でもある。
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