2016/06/10

【日本建築協会】『関西の建築界』は今、どこにあるのか 創立100周年で公開討論

日本建築協会(香西喜八郎会長)は8日、大阪市北区の常翔学園大阪センターで100周年記念公開討論会「『関西の建築界』は今、どこにあるのか」を開いた=写真。
 会誌『建築と社会』で2009年9月から15年6月まで70回にわたり連載し、17年3月の創立100周年を記念して単行本化するインタビューコーナー「関西の建築界/群像」の総括として、編集委員会代表を務めた本多友常摂南大教授や倉方俊輔大阪市大准教授らが意見を交わした。

 パネリストは本多、倉方両氏のほか、連載でインタビューを担当した若手建築家らが務め、現代の「建築界」とは何を意味するのか、「関西」というくくりの必要性はあるのかについて議論した。
 冒頭、若手建築家が取材の感想を述べた。ランドスケープアーキテクトや構造設計家などを取材した岡村吉展氏(大林組)は「70回のうち半分が建築設計以外の人。建築界へのかかわりの多様性を感じた」と振り返った。照明デザイナーなどを取材した杉山美納氏(東畑建築事務所)は「いろんな分野の垣根がなくなっている中で、『建築界』『関西』というくくりにあまり意味を感じない」と主張。関西以外の出身者を中心に担当した三谷勝章氏(大林組)は「関西は実直に素直に物事に立ち向かい、人との距離が近い印象がある」と話した。
 これらの意見を受けて倉方准教授は「人間と生活の距離が近く、まちの規模が手ごろで居心地が良いのが関西の良いところ」と分析。「こういった特徴を新しい関西の建築界の在り方に無理やりにでも結び付けないと、せっかくの個性がもったいない。関西は東京をライバル視しているかもしれないが、東京からすれば東京以外はみんな同列。むしろ強烈なローカル色を持つ四国や北陸、九州のほうがアピール力は強い。関西が持つ良いところをもっと意識して仕事をしなければ埋もれてしまう」と警鐘を鳴らした。
 本多教授は「昔の関西の建築界は、確固たる主義を持つ強い個性の巨匠たちが引っ張っていた。いまは縛りにとらわれない、自由をうたう若い人が多いが、それによってプロフェッショナルとしての仕事の質を下げる危険性もある。クオリティーを保ちながら境界を崩していく意識が必要だ」と提言した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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