2016/06/18

【地域建設業】もったいないから生まれた作業員の育成策! 平安建設工業(京都市)の挑戦


 京都市左京区にある平安建設工業。アイデアマンの井上準二社長(63歳)率いる同社は、土木・建築工事を始め屋上緑化や遮熱塗料の開発など、幅広く事業展開している。最近力を入れている分野のひとつが橋脚の補強工事。施工中に感じた「もったいない」をきっかけに、作業員育成に乗り出した。

 京都府を始めとする土木工事を中心に、店舗など民間の建築工事も手がけている。環境分野への関心から屋上緑化には「20年近く前から取り組んでいる」と話す。また最近は窓ガラス用の遮熱塗料「MADOCO(マドコ)」を独自に開発。同商品は、京都府が府内企業の優れた環境技術に対し実施している「エコスタイル認証」を2013年度に受けている。
 「いろいろなことをやっているとは言われる。でも、これもひとえに経営を安定させたいから。中小企業が生き残るためには、アンテナを常に張りめぐらせなくては」と、井上社長は技術開発の重要性を強調する。

橋梁補修の一例(京都市・勧進橋)

 同社がいま積極的に取り組んでいる分野のひとつが、橋梁の補強工事。前田工繊が開発したRC橋脚巻立て補強「PP工法」を11年から手がけ、京都府内を中心に10カ所を超える橋梁補修実績を持つ。13年には同工法の施工企業で構成するPCM工法協会にも加入した。
 同工法は橋脚に鉄筋を組み立てた後、マグネライン(ポリマーセメントモルタル)を吹き付けて補強する。型枠が不要で条件が厳しい環境でも施工が容易なことが特長。ただしポリマーセメントモルタルは「通常のコンクリートと比べて値段が高い」のがネックでもある。
 とある現場で作業員(ノズルマン)が施工に苦労している光景を目にした。吹き付けたモルタルがしたたり落ちていく様子が「すごくもったいなかった」。的確に吹き付けできる技術者の育成が必要だと確信した。その後、施工実績を重ね材料配合やホースの位置、吹き付けの圧力といったノウハウを蓄積できたこともあり、講習会を企画した。
 講習会は京都・滋賀地区のPCM工法協会員を対象に開かれた。昨年8月と10月の2回、滋賀県東近江市にある前田工繊の工場で開催され、これまでに約40人が受講している。この取り組みが国土交通省「地域建設産業活性化支援」のステップアップ支援対象に選ばれ、講習会の費用負担を軽減することができた。「材料や手順のロスや無駄が少なくなり、施工の品質も向上したと思う」と効果に自信を見せる。ことしも夏に講習会を開く計画だ。
 「これからは維持管理の時代」と、橋梁メンテナンスの分野には引き続き力を入れていく考え。「メンテナンスの分野だけで売り上げを1.5倍くらいまで伸ばしたい」と意気込む。
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