2016/06/26

【現場最前線】緩行線トンネルが本体構築へ、下北沢駅舎は透明感ある空間に 小田急線複々線化事業


 小田急電鉄が、東京都世田谷区で建設中の小田急小田原線複々線化事業の東北沢~世田谷代田間(下北沢地区)。2004年に着工した同地区(1.6㎞)では、4車線地下式による複々線化工事のうち、下北沢駅舎の構築が進み、今夏から秋にかけて下北沢駅交差部で緩行線トンネル構築工事が最盛期を迎える。また、京王井の頭線の橋梁架替工事も本格的に始まる。工事は、大成建設・前田建設・西松建設・錢高組・三井住友建設JVなどが担当。混雑の緩和、所要時間短縮による都心方面へのアクセス向上などに向け、17年度の複々線化の実現、18年度の事業完了を目指す。

 複々線化事業は、東北沢~和泉多摩川間10.4㎞のうち、世田谷代田~和泉多摩川間(8.8㎞)が完成。残る下北沢地区を建設中。また、東京都の連続立体交差事業と一体的に進めており、13年3月の地下化によって、対象区間にあった39カ所の踏切がなくなり、交通渋滞が解消し、安全性が向上した。

構築した緩行線トンネル(新宿方面)

 下北沢地区の対象区間は、京王井の頭線交差部を含む約460m。緩行線トンネル構築や駅舎工事などを進めている。小川司複々線建設部長は「15年度は井の頭線交差部を除く下北沢~世田谷代田間の緩行トンネル構築に必要な掘削工事が完了し、トンネル本体の構築工事に着手した」と説明。駅舎の一部が完成し、改札口の使用を開始した、東北沢駅(施工=大林組・鉄建・五洋建設JV)と世田谷代田駅(同=清水建設・鴻池組・大豊建設JV)は、16年度に本設駅舎が完成するという。

小田急小田原線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)連続立体交差事業と複々線化事業(縦断図)

 また、世田谷代田駅~東北沢駅間(第3工区)は、▽世田谷代田駅~下北沢駅間▽下北沢駅部▽下北沢駅交差部▽旧東北沢6号踏切付近--に大別し、大成・前田・西松・錢高・三井住友JVが担当している。16年度は「井の頭線交差部を含む緩行線トンネル構築工事が最盛期を迎え、緩行線トンネル完成個所から順次、レールや架線など開業設備の設置を進める」。緩行線トンネル工事の進捗率は「下北沢駅を境に小田原方面が79%(掘削100%)で、新宿方面が56%(78%)」という。

下北沢駅の完成予想図

 下北沢駅は、地上2階地下3階建てで、地上1階が改札階、2階は東西通路と商業施設を計画。地下1階が機械室で、地下2階は緩行線ホーム階、地下3階には急行線ホーム階となる。駅を中心に街を回遊するさまざまな人の流れを創出するため、改札口を開放的な空間にする考え。「天井や壁面を透過性のあるガラスにすることで、開放感のあるデザインにしている」(宮原賢一複々線建設部課長)のが特徴。環境負荷を低減するため、自然エネルギーの有効利用施策を実施。「自然光の利用や太陽光パネルの設置、緑化、外気を取り入れる自然換気などを計画している」(同)。街の回遊性と駅の利便性向上のため、新宿方面、小田原方面、さらに京王井の頭線への乗換個所に改札口を設置する。駅部の工事は、地上1階と地下3階を結ぶ本設エスカレーターの使用を5月21日に開始し、16年度は駅舎の構築、機械設備工事を進め、18年度完成を予定している。

下北沢駅舎2階から見たイメージ。解放感あるデザイン

 下北沢駅交差部については、今夏まで掘削工事を進めるとともに、夏から今秋にかけて緩行線トンネル構築工事を進める。また、京王井の頭線交差部工事は、京王電鉄の駅部工区と同時に進めている。仮橋用橋脚の一部撤去(井の頭線の受替え)を行うほか、16年度は井の頭線の橋梁架替工事が本格的に始まる。

下北沢駅の地上コンコース

下北沢駅交差部の地下。掘削、緩行線トンネル構築が本格化する

 下北沢地区は、地下化により生まれた上部空間の利用についても、都、世田谷区、渋谷区と協議を進めてきた。これらを踏まえ、小田急電鉄では、「街のにぎわいや回遊性、子育て世代が住める街、文化」をキーワードに、上部利用計画を策定。下北沢駅周辺を「シモキタショッピングゾーン」とするなど、全体を3ゾーンに分けて商業・業務・居住系の施設を計画し、世田谷区が掲げる防災・減災や緑のある街づくりを考慮して開発していく。
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