「新たな防水対策の流れが出てきた」と、三和シヤッター工業で法人営業推進第二グループリーダーを務める友重博雅氏は強調する。集中豪雨などに伴う都市部の浸水被害が深刻化する中、建築物の防水対策は広がりを見せている。これまでは地上部への対策が中心だったが、ここに来て地下鉄からの浸水を防ぐ事例が出始めた。ディベロッパーのBCP意識拡大とともに、防水対策も多様化してきた。画像は三井水とも銀行本店ビルディングに設置された防水シャッター
東京・丸の内の複合施設「三井住友銀行本店ビルディング」と、日本橋の複合施設「コレド日本橋」で、地下鉄との連結通路部の防水対策が完了したのは、ことし3月のことだ。事業主の三井不動産はBCP対策として2012年度から保有既存ビルの改修に乗り出し、その一環として浸水対策にも注力してきた。
中央防災会議が示した被害予測では、荒川が氾濫(はんらん)した場合には地下鉄から浸水する可能性が示された。集中豪雨の対策として1階部分には防水パネルを設定する対策を講じていた三井不動産だったが、地下鉄からの浸水については十分でなかった。万が一に備え、浸水高さが2mでも対応できる対策として選ばれたのが、三和シヤッター工業が防水商品のウォーターガードシリーズとして2014年10月から販売する「防水シャッター」だった。
防水機能が付いた電動パネル式シャッターは業界初の試み。両施設とも地下鉄からの連結通路部は広いが、開口部高さ25000mm以上に対応できる防水シャッターとの相性は良かった。普段は天井部にシャッター部分が納まる仕組みであるため、高さ900mm、幅1500mmの天井裏スペースさえ確保できれば設置できる。浸水防止性能も1㎡当たり1.7リットル時と、一般的な性能値の20リットル時を大幅に上回る高い防水性も決め手になった。
友重氏は「都心部の地下鉄連結通路部すべてが2mの浸水高さを前提に対策を講じるわけではないが、ディベロッパーのテナント配慮を重視するBCPの意識は高く、潜在需要はある」と見通す。既に複数件の新築プロジェクトで製品折り込みのスペックインが完了している状況で、特に東京都内では「採用実績を一気に増やせる」と強い期待を持っている。
コレド日本橋に設置された防水シャッター |
防水シャッターは、平常時に管理用シャッターとしても活用できる利点がある。意匠性もあり、地下鉄連結通路部での使い勝手も良い。同様の製品が他社にないことも優位性を発揮できるポイントの1つだ。法人営業推進第二グループのディベロッパーチームで課長を務める石川貴氏は「これまでの浸水対策はハザードマップを踏まえ、対策を講じる傾向が強かったが、現在は想定外を持たない意識が広がっている。200年1度という被害確率であっても、そこにしっかりと投資する流れになっている」と話す。
ウォーターガードシリーズはシャッター、ドア、シート、パネルなど防水対策の関連製品で構成する。防水対策の需要拡大を見越し、同社は3年後の受注規模を現在の3倍に引き上げる計画を打ち立てる。中でもビル出入口向けで浸水高さ1m対応のSタイトドアが主力となり、売り上げを大きく伸ばしている。浸水対策にはそれぞれの部位の専門メーカーが製品を投入しているだけに「建物まるごとの製品をそろえている点が、ウォーターガードの強みでもある」と石川氏は強調する。
近年多発する集中豪雨に伴い、都市部の浸水対策は急務になっている。防水対策は新築プロジェクトだけでなく、既存ビルについても両睨みで提案している。ことし4月には法人営業グループを拡充し、ディベロッパーを中心に活動する第二グループを新設した。友重氏は「すべての商材を売り込むことが使命だが、その中でも防水対策へのディベロッパーの関心は一気に高まっている」と説明する。
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