2016/06/17

【記者座談会】本格始動した「i-Construction」 ものづくりツールの大変革はどう動く?

A 生産性革命という旗印の下、国土交通省が2016年度から本格始動した「i-Construction(アイ・コンストラクション)」は、調査・測量から設計、施工、維持管理に至るまでの全建設生産プロセスに影響を及ぼす。まさにいま、建設産業界全体が、かつてないほどの大転換期を迎えている。

B 実際に国交省直轄事業では、土工にICT(情報通信技術)を全面的に活用する「アイ・コンストラクション対応型工事」が現場レベルで動き始めた。北海道と北陸で進む第1号工事は、従来の既契約案件からICT土工に移行した形だが、16年度内には全国で約410件がアイ・コンストラクション対応型工事として発注される見通しだ。
C このうち約380件は、いわゆる手挙げ方式の「施工者希望型」であり、ICT活用の有無は企業側の意欲に左右される。どこまで実績を積めるかは業界次第だ。発注側は必要経費の手当てだけではなく、総合評価や工事成績での加点といったインセンティブも用意しており、国交省の思いに全力で応えるのは業界の責務といっても過言ではない。既に6月10日現在で、109件の工事がICT活用候補として入札公告されている。応札者には積極的な姿勢を期待したい。
B 国交省の本気度は、ICTに対応できる官民双方の人材育成に向けた取り組みにも表れている。ことしは施工会社や自治体職員向けの講習・実習が、すべての都道府県において計200カ所で開催される。3次元対応型の新基準類の解説を始め、ドローン測量やICT建機による施工の実演などを行うという。
A 民間企業の反応はどうか。国交省サイドも設計者や施工者がどこまで前向きなのか知りたいところだろう。
D 生産性向上を打ち出すのは民間企業も同じだ。ゼネコンも経営戦略に生産性向上を位置付け、ICT活用にかじを切ろうとしている。各社ともアイ・コンストラクションには前向きだ。先日には東急建設の飯塚恒生社長自らが自社のICT施工見学会に参加したように、トップダウンでICTを推進する流れになっている。
C 大手企業は心配していない。地域建設業がどこまでついて来られるかが、国交省も気になるところだろう。希望型工事では、施工者自らが起工測量の際に3次元計測を行うが、インセンティブの導入によって自ら手を挙げる業者は対応しやすくなった。ただ、測量から設計、施工へと順を追ってアイ・コンストラクションを実施する場合には、各プロセスを担当する企業がきちんと順応できるか気になるところだ。
E 確かに川上領域は仕事のやり方が大きく変わる。測量業務は3次元計測への対応が問われ、設計業務では3次元測量データに基づいた設計作業が必要になってくる。新たなデータ形式として採用される「LandXML」も既に公開されたが、データ作成・受け渡しの関連ソフトウエアが整備されなければ、国交省としても発注しにくい。ソフトベンダーの動きも見逃せない。
D 建機メーカーも対応機種を整え始めた。呼応するように、計測機器メーカーもアイコンストラクションを見据えた製品ラインアップを充実している。ものづくりのツールが大きく変われば、それに対応した設備投資は当然必要になってくる。分野を問わず、建設産業界のICT投資は一気に膨れあがることは確実だろう。
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