2016/06/29

【建築倉庫ミュージアム】建築模型130点! 名だたる建築家たちの“思考の倉庫”が日本の建築文化を発信



 約450㎡、天井高5.2mの空間に100を超える棚が立ち並ぶ。幅1500×奥行き750×高さ3800mmの棚にはスタディー段階から完成まで大小さまざまな建築模型が収蔵・展示され、わが国を代表する建築家たちの思考のプロセスをたどることができる。東京都品川区の天王洲アイルに6月18日オープンした「建築倉庫ミュージアム」は、まさに「思考の倉庫であり、アイデアの倉庫」(徳永雄太館長)でもある。写真:「来場者が何度来ても興味を持ってもらえるよう中身はどんどん入れ替えていきたい」と語る齊木優子副館長

 建築模型に特化した国内唯一の展示施設であり、模型専門の保存機能を持つ、新しいかたちのミュージアムが誕生した背景には、プロジェクト単位で作成されていく膨大な建築模型の保管に悩む建築家・設計事務所の声がある。
 「最初に提案いただいたのは坂茂さん。寺田倉庫で保管に困っている模型を保存できないか、できれば一般の人にも見てもらいたいと。棚を並べる展示方法も坂さんの構想です」とは齊木優子副館長。当時、坂氏が模型保管のために借りていたアパートにも実際に訪れ、「紙でできているものが多く、それだけに劣化もしやすい。少しでも環境の良いところで保管した方がいい」と実感したという。
 ミュージアムを運営する寺田倉庫は「ワインセラーや美術品保管の豊富なノウハウを持っており、それを生かした」(齊木氏)。館内は湿度50%、温度は20度前後を保つよう管理を徹底している。ただ「建築模型の保存・展示は国内でも初めてであり、最適な保存環境を大学などとも連携しながら研究したい」と語る。


 現時点で19組の建築家・設計事務所から約130点の模型を保管・展示している。フリーに使える企画スペースを含めてキャパシティーの「6割程度」という。模型は基本的に事務所側が選定。“棚貸し”のかたちで上部スペースは梱包箱とセットとなる。「デザインされた箱を見るのも楽しみの1つ。海外を回ってきた歴史まで感じられる」と齊木氏。
 フラッシュは禁止だが写真撮影が可能なことも特徴。「大きな模型では中に入り込むような感覚で撮影できる。建築になじみのない人でも楽しめ、興味を持てるのではないか」とその意図を説明。「出展者、来場者とともにより良いミュージアムをつくっていきたい」と意気込む。

出展模型は実現したものだけれはない。東京都新宿区四谷にある「聖イグナチオ教会」の
設計協議での香山壽夫+環境造形研究所による計画案は、その良好な保存状態からも
建築家の思いの深さをうかがい知ることができる。
「学生さんなど食い入るように見る来場者も多い」という

 ミュージアムのコアスタッフは4人。徳永館長、齊木副館長とも構想が持ち上がった2年前から開館に向けて取り組んできたが、それまではともに「建築とのかかわりはなかった」という。「これだけ日本の建築家が世界で活躍していることも知らなかった。日本の建築はまさにクールジャパン」とは徳永氏の弁だ。建築界やアートの世界でもアーカイブの重要性は増しており、現在活躍する建築家や設計事務所の模型が持つ文化的価値は今後さらに高まっていく。「建築を知らない人にも、その価値に触れてほしい」(徳永氏)と力を込める。

徳永雄太館長

 展示棚に設置されたQRコードをタブレット端末やスマートフォンなどでスキャンすると設計者のプロフィールや模型作品の竣工写真、図面などの情報にアクセスできる。「自ら情報を取りに行くことで知識となる。その過程も大事なのだということを訴えていきたい」と徳永氏。「一過性の話題に終わらせることなく、しっかりと文化的な価値を根付かせたい」という強い思いが根底にある。今後、子どもを対象としたワークショップやギャラリートークなども企画していく考えだ。国内外になだたrさせていく「建築文化のプラットフォーム」として、建築の未来を育んでいく。

■所在地:東京都品川区東品川2-6-10寺田倉庫本社ビル1階
■開館日:火曜日-日曜日(月曜日休館、ただし月曜日が祝日の場合は翌火曜日休館)
■開館時間:午前11時-午後9時
■問合わせ:電話03-5769-2133
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