2016/06/10

【技術裏表】解体現場環境をリアルに再現 シーワークスの「解体業パッケージ」

建物の新築や改修工事だけでなく、解体工事にも3次元モデルが活用され始めた。シーワークス(東京都多摩市、藤田一世社長)が開発した解体工事専用3次元CAD「解体業パッケージ」は解体現場の3次元モデルを構築し、足場など仮設の設置や構造物の解体手順などを事前にシミュレーションして施工計画の検討に役立てる。藤田社長は「工事の生産性を高めるとともに、ビジュアル化や数量集計機能で営業力の向上にも効果を発揮する」と強調する。建設ITの導入が解体工事に大きなイノベーションをもたらす可能性がある。



 建設業の就労者不足の問題を背景に、解体現場でも生産性と安全対策の向上は喫緊の課題だ。藤田社長は「住宅密集地など複雑な敷地条件での解体工事が増えている。着工前にシミュレーションすることで工事の円滑化に貢献したい」との思いがあった。2009年の発売以降、現場の声に耳を傾けながらソフトウエアの改良を重ね、解体工事会社や足場施工会社を中心に評価を高めてきた。
 ソフトは、設計図面のほか、解体施設の現地調査で把握する階数や高さなどの情報から、柱・梁・壁・スラブなど躯体情報を備える建物を3次元モデルで自動作成する。解体に不可欠な枠組や単管足場、防音シートやパネルなどは平面図に指定するだけで簡単に3次元モデルに配置する。散水者や作業員、警備員、通行人、仮設事務所やトイレなどの部材も豊富に取りそろえ、現場環境をリアルに再現できる。
 モデル内で原寸大の重機を動かし、アームの長さや角度、車体の位置などをミリ単位で把握できるため、作業効率や安全性を考慮した重機の配置に生かせる。壁や天井の切り取り作業、補強材の配置など解体工事に必要なコマンドを豊富にそろえ、現場感覚で操作できるのが強みだ。「3次元で現場の細部まで把握し、車両が通行できない場所や仮設の取り合いが複雑な場所を事前に検証することが可能だ。現場でのトラブル回避につなげることができる」と効果をあげる。
 “見える化"により、作業員の安全管理に役立てるほか、近隣説明でも工事概要を3次元パースで分かりやすく説明できる。数量集計機能も備え、コンクリートボリューム、足場の部材数量や面積などを自動集計する。従来の見積もり作成の作業に比べ精度とスピードが格段に向上した。
 藤田社長は「営業マンは他社より早く図面や見積書を客先に提示したいもの。図面作成をアウトソーシングするケースが多いが、内製化することで会社の技術力が向上し、コストダウンや作業の迅速化につながる」とメリットを挙げる。
 足場計画は元請会社が作成するが、多くの場合、下請けの足場施工会社が営業サービスの一環として図面作成を補助している。「見積もりが足場施工会社の主導になりがちだ。元請側が自ら数量を算出し、見積もりを把握できるようになればコスト管理能力を向上できる」と指摘する。
 作成したデータは、DXF、DWG、JWW、JWC、SXF(SFC、P21)形式に変換できるため、提出先のクライアントのコンピューター環境に合わせて図面を提供できる。紙図面の使用が根強く、CAD自体が普及段階にある解体工事業界にあって、「若い世代の経営者を中心にCADを導入する動きが進んでいる」という。解体工事に特化した類似のCADソフトがないため、「CADを初めて導入する企業の社員が簡単に操作できるよう、分かりやすさにこだわる」ことで業界のCAD普及を支援する。
 出張訪問やリモート講習などを全国の都道府県で展開している。藤田社長は「CADなど建設業のIT化にふれる機会のなかった企業を積極的にサポートしていきたい」と先を見据える。
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