大林組の現場でデジタル野帳「eYACHO(イー・ヤチョウ)」の存在感が増している。MetaMoJi(本社・東京都港区、浮川和宣社長)と共同開発し、5300台のiPadに導入したのは1年前。南青山3丁目工事事務所の川崎亮太主任は、「最初は馴染みのないインターフェイスに苦悩する日々が続いた」と話すが、気がつくと自然にiPadでメモを取る習慣が身に着いていた。
eYACHOは野帳を忠実に再現し、タブレット用筆記ペンで紙と同じようにメモできる「ノート編集機能」をはじめ、現場の写真をiPadで撮影して画面上に貼り付け、文字を書き込める「写真機能」も備える。図面はサーバから直接取り出せるため「事務所に戻る回数が減る」(川崎主任)効果も生まれた。
現場巡察記録はテンプレートに直接記入し、朝礼時の出面帳には専用の表計算ユニットを組み合わせて使う。黒板や看板、図面指摘などのアイテムのほか、音声録音機能で打ち合わせの記録もとることができる。導入が進む中で「自分の情報を他の人にも渡したい」という現場の声が上がり、5月のバージョンアップでクラウド対応になった。
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現場監督が是正指示や出面をクラウド上におくと、所長がそこにアクセスして中身を確認でき、双方向のやり取りが実現する。個人ドライブのノート類まで、あらゆる操作がリアルタイムに保存され、タブレットが破損してもすぐに復元できる。
MetaMoJiの浮川社長は「eYACHOの導入は、どういう環境で社員に仕事をしてもらうかという経営的な判断に基づいたもの」と話す。現場の社員はeYACHOを使うことで「タブレット端末という新しいツールを使いこなす力を身に着けた」と説明。2日から法人向け製品として提供も始めた。価格は5ライセンス年間10万円からだ。
導入の目標は作業効率化にあるが、タブレット端末のクラウド化により、全国の現場で情報共有が可能になるほか、経営分析のビッグデータとしての活用や、法的な問題が発生した際に時間ごとの作業履歴が確認できるなど、運営上のメリットも大きい。大林組の堀内英行グローバルICT推進室副部長兼技術課長は、最近の現場ではタブレット端末の便利さが浸透して「図面を見せてくれと職人さんが集まってくる」と、その効果を口にする。社内のタブレット数は5800台に拡充。現場監督以外にもエンジニアリング関係や研究所、現場支援職なども愛用を始めた。
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