北海道は2016年、相次いで上陸した台風の被害に加え、11月上旬に記録的な積雪に見舞われた。東日本高速道路北海道支社は、厳しい気象条件と近年頻発する異常気象の中で、地域道路網の基幹的役割を担う高速道路を整備、維持管理している。同支社は計画する最後の新設ルートとなる北海道横断自動車道小樽~余市間の工事を確実に進める一方で、新技術を活用した雪氷対策にも力を入れる。最新の取り組みを紹介する。写真は冬季もワーゲン工法で進む工事
■小樽~余市間 18年度に開通
北海道横断自動車道小樽~余市間は、余市町登町の余市IC(インターチェンジ)から小樽市新光町の小樽JCT(ジャンクション)までの23.4㎞が対象となる。車線は暫定2車線とし、中間に小樽西ICを設ける。認可済みの事業費は1081億円。18年度の供用を目指す。
完成すれば、道央圏と観光資源が豊富な後志(しりべし)地域を結ぶ重要ルートとなり、沿線地域の産業・経済・観光の発展、物流の効率化、救急搬送に大きな効果が期待される。
国土交通省北海道開発局の直轄事業として16年に着工した倶知安余市道路(共和~余市間、延長27.6㎞)と併せて、札幌や新千歳空港からリゾート地であるニセコ地区へのアクセス向上も実現する。
新設する高速道路の並行区間には国道5号があるが、急崖地形を海沿いに通る路線であるため、土砂災害発生時に長時間通行止めとなる。
国道274号も16年の台風10号の影響により通行止めとなっており、代替として同支社が管理する道東自動車道の並行区間で無料措置を適用している。新設する高速道路でも国道被災時の代替路としての機能が見込まれている。
工事の進捗率は約75%(2月7日時点)。冬季もワーゲンやトラベラー(大型移動作業車)を使った張出し架設工法によるPC上部工やトンネル工事を進めている。
同支社の林正幸小樽工事事務所長は「完成すれば、札幌から余市が1時間圏内となり、利便性が大いに向上する。18年度に開通できるように、安全に工事を進める」と力を込める。
■雪氷にGPS活用のアイスコス導入
同支社が維持管理分野で、力点を置いて取り組んでいるのが雪氷対策だ。
最新技術を活用した取り組みとして、GPS(全地球測位システム)などを使った「ISCOS(アイスコス)」を14年度から導入している。
ISCOSを活用し、凍結防止剤の最適量を散布する |
ISCOSは、路面判別データを基に凍結防止剤の最適な散布量を自動散布する技術だ。まず、ブリヂストンが開発した路面状態判別システム「CAIS(カイズ)」を搭載した氷雪巡回車が路面のデータを収集し、インターネット経由でデータベースを構築する。CAISは搭載車両のタイヤ内部に加速度センサーを取り付け、凍結や湿潤などの路面状況を判断する。データベースを基に、散布装置を搭載した凍結防止剤散布車が自動で作業を実施する。GPSを活用して100mごとの路面状態にあわせて最適量を散布できる。
同支社では、雪氷対策費のうち、凍結防止剤が約2割を占める。凍結防止剤を散布することは、構造物への塩害影響も大きい。道内でも降雪量の多い岩見沢管理事務所の畑山欣作所長は「15年度は1回当たりの通行止め時間を前年度の半減、通行止め量を6割に抑えることができた。除雪機械には限りがあるので、柔軟に対応しながら取り組んでいく」と、成果を口にした。
■冬季重要課題 技術力で臨む
同支社は、国内の他地域とは全く異なる条件下で、これまで独自のノウハウを蓄積してきた。新設計画は小樽~余市間で完了するものの、老朽化対策や暫定2車線の4車線化など整備事業は続く。
廣瀬博社長が「冬季の最重要課題」とする雪氷対策も新技術と同社の雪氷技術を組み合わせて臨んでいく。
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