関東地方整備局や管内の長野、茨城、千葉、東京の都県は、2015年度から週休2日制を確保するモデル工事の試行を始めた。休日の設定方法を発注者または受注者が決める同局のやり方もあれば、休日を土曜日と日曜日に固定する県もあるなど、その方法はさまざまだ。未試行の県を含め動向をまとめた。
◆長野県
同局管内で最初に試行したのは長野県だ。15年度早々に始めたことから同年度は37工事で試行する予定だ。原則として土日を休日とし、工事の内容によって受注者が変えられるようにした。
15年11月までに完成した3件の現場では、1件が土日固定、2件が土日以外で、いずれも週休2日を完全取得した結果となった。15年度は元請企業ではなく、労働者を対象にアンケートをしており、「体を休めることができた」「休暇が増えた分、支出が増えた」などの回答が寄せられた。16年度も試行する考えで、同年度は「元請企業にもアンケートをしたい」という。
◆茨城県
続いて15年10月に試行を表明したのは茨城県と関東地方整備局だ。
茨城県は15年度、4つの土木事務所で1件ずつ試行する。実施要綱は長野県に近い内容で、▽土日の休日を基本とするが現場の状況により受注者は別の日を選定できる▽受注者は現場にモデル工事であることを記載した看板を設置する▽受注者が予定どおり現場を休工できたなどの取り組み状況に応じて工事成績で加点評価する--などの項目が共通している。
ただ、茨城では15年度、元請企業に対してアンケートを実施するほか、受注者が非協力的な場合に工事成績を減点評価する。工事過程で発生した課題を検証し「労働環境の改善につなげていきたい」と意気込む。
◆関東地整
同局は、多様な手法により課題の抽出を試みる。
具体的には、一般土木工事で▽1週間のうち土日問わず2日間の休日を確保▽1週間のうち土日固定で休日確保▽月単位で4週8休を確保--の3つから、各出先事務所があらかじめいずれかを指定する場合と受注者が選択する場合の2通りを用意した。各出先事務所には1件以上試行するよう要請している。
さらに、契約済みの工事であっても、受注者から申し出があった場合に試行工事として認めることができるようにしており、「手を挙げる案件が出ている」状況だ。
同局は「ちゃんと週休2日を取れてしまうより、むしろうまく行かない方が課題が出て良い」と見ており、「できない理由が受発注者のどこにあるのか知りたい」ため、完全週休2日にならなくても問題ないとするスタンスだ。そのため、休暇の取得計画が達成できない場合でもペナルティーは課さない。
◆千葉県
15年11月に試行を表明した千葉県は、あえて休日を土日に固定した。
その理由について「建設業界の魅力を高めることが目的にある。他産業は土日休みなのに建設業が違うようでは若い人は敬遠してしまう」と説明する。15年度は7件を試行し、年度末に実施結果をまとめる。
◆東京都
東京都は、ことし1月以降に公告する案件から試行を始めた。「受注者が柔軟に対応できるよう」1週間のうち休日を土日問わず2日間確保するパターンと土日に固定するパターンを受注者が選択できる方式を採用した。
同局と同様に週休2日を確保できなくても工事成績評定の減点対象とはしない。実施結果は16年度にまとめる予定だ。
一方、未試行の県では、山梨県が「時期は未定だが、試行に向け前向きに検討中」と最も積極的な反応を示した。
◆群馬県
群馬県は「取り組みたいが、現在は情報を集めている。15年度はフレックス工期の試行に力を入れており、その結果と他県の週休2日制モデル工事の試行状況をみながら、どのような工期設定が良いのか考えていきたい」とした。
◆神奈川県
神奈川県は「発注の平準化を含めこれから検討する」、埼玉県は「問題意識としては持っている。今のところ具体的な動きはないが情報収集は進めている」と回答した。
◆栃木県
栃木県は「検討はしており、発注者の思いはあるが受注者が対応できるのかという問題がある」と指摘する。週休を2日にすると日当制の職人の所得が減ってしまうこともあり「業界と意見交換した上で判断したい」とした。
担い手確保に向けて16年度以降、試行を始める県や政令市、市町村がさらに現れるか注目したい。
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