2016/01/28

【担い手】仮囲いの中のかっこよさ伝えたい! 土木建築系カルチャー誌『BLUE’S MAGAZINE』 柳知進さんに聞く


 土木建築系総合カルチャーマガジン『BLUE’S MAGAZINE(ブルーズマガジン)』が、昨年5月に創刊した。同紙は既に、テレビや週刊誌などで広く取り上げられている。隔月で発行しており、既に4号を出版した。水道の専門工事会社社長でありながら、「土木建築の現場で日本の根幹をつくり続ける若者たちの姿に、日本の未来がある!」と信じる柳知進さん=写真=が中心となって創刊した。柳さんのインタビューをもとに、マガジンの理念と思いを紹介する。

 ブルーズマガジンは、2014年9月に柳さんが、作家の石丸元章さんらと立ち上げた感電社が発刊している。同紙は「土木建築系総合カルチャーマガジン」と銘打ち創刊。柳さんは「普段、仮囲いで見えない現場のかっこよさを伝えるのが目的だ」と話す。
 創刊のきっかけは、「自分は35歳だが、これまで現場で仕事をしている時に年下がいないこと、求人を行っても応募がないことに驚いていた。自分が働く土木・建築現場の仕事には魅力がないのだろうかと自問し、それならば自ら雑誌を創刊して魅力を発信するしかない」と考えたからだ。

ブルーズマガジンが編集されている感電社で(左から柳さん、雨森諭司さん、石丸さん)

 柳さんは、実家が兵庫県姫路市で土木建設業を営んでおり、幼少期から現場で働く人のかっこよさは認識していた。上京のきっかけは、当時参加していたパンクバンド。音楽活動を行いながら建設業でも働き、バンド活動と生業としての建設業の魅力が何ら変わらないことに気づく。
 そんな中、「この仕事に若い人が魅力を感じないことが不思議だ」と疑問を抱いた。東北の震災後は、工事が増えて人手不足が顕在化したり、職人の数が足りずに入札が成立しないこともあった。自分の会社でも、求人誌に広告を出しても1本の電話も鳴らなかった。
 そんなころ、作家の石丸さんと出会う。話をしていて「土木建築の専門メディアを立ち上げたい」と感じた。「雑誌にすれば、現場の魅力や親方のかっこよさを発信できる」と考えた。

ブルーズマガジン最新号。毎号、土木建築のかっこよさを題材にした写真で飾られる

 そうして世に送り出したマガジンは、創刊準備号を含めて5号を数える。表紙写真は、毎号武骨な男が荒々しく登場する。それは「これまで見えてこなかった“現場のかっこよさ”」を表現した結果だ。
 毎号50ページを超えるボリュームは圧巻だが、びっしりと並ぶ小さめの活字が、読者をさらに引き込む。特集は、伝説の親方であったり、外国人労働者のインタビューであったりと、切り込んだ硬派取材を繰り広げる一方で、女性親方のインタビューや書評といった柔らかな記事も織り交ぜる。
 最近はメディアへの露出も増えてきている。「あと20年、30年経つと、宮大工など伝統の建設技術までが消えてしまう。そうした伝承の役割も担えればうれしい」と柳さんは語る。
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