2016/01/08

【本】解体された建築を写真と意匠図で継承 NICHE編著『建築を保存する本 01』


 解体された建築をどうやって継承するのか。工学院大学では同大八王子図書館を昨年解体したのに合わせ、図書館の来歴と設計を担当した同大の教授で建築家の武藤章の業績を紹介する書籍『建築を保存する本01』を出版した。数多くの写真と108枚の意匠図、家族のインタビューなどを収録し、図書館の記憶を後世に伝えようとする。

 武藤は1961年にフィンランドのヘルシンキへ渡り、アルヴァ・アアルトの下で北欧モダニズムを学び帰国後は数多くの作品を残した。その中でも、八王子図書館は日本における北欧モダニズムの作風を色濃く示す作品として知られる。しかし、本書は単なる建築作品の紹介にとどまるのではなく、設計当時の武藤の思いにまで迫ろうとする。
 意見調整や予算額の設定、設計費用の支払い方法など多くの課題が山積しているにもかかわらず、なぜ学内の建築学科が設計監理を担当したのか。
 「私たちは、それでも自分たちの施設を自分たちの手で設計することをあえてやらなければならないと考え、あえて火中の栗を拾った」との理由を本書が明らかにしたことで、武藤の建築家としての思想もまた後世に継承されていくはずだ。(NICHE・2700円+税)
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