2016/03/25

【現場最前線】「静岡モデル」の防潮堤整備 独自のCSG統合管理システムで挑む


 浜松市で建設が進む静岡県の防潮堤整備事業は、既存の防災林などをかさ上げ・補強する「静岡モデル」として全国の沿岸域自治体から関心を集めている。この現場で前田建設JVは、CSG製造とCM(コンストラクション・マネジメント)業務を担う。独自のCSG統合管理システム「MAC Links(マック・リンクス)」によって品質を高めているほか、施工を担う地元企業の技術指導やマネジメントも進めた。今月中旬に現地を訪れ、前田建設JVの取り組みを取材した。

 防潮堤の整備では、建設現場周辺の砂礫をセメントと混ぜて堤体を構築するCSG工法の採用が決まった。長さ10㎞の防潮堤は計8工区に分割して地元の建設会社などが施工するが、CSGのノウハウが薄いため前田JVがCSG製造に加えてCM業務を担当することになった。
 CM業務では、CSG防潮堤施工要領の周知から打設スケジュールの作成、日打設量の向上策、現場密度試験の統一化に至るまでをカバーした。CSGの製造段階で品質を高めても、打設や密度試験などにバラツキがあると、最終的な成果物の品質を左右しかねないからだ。
 現場密度試験では、各工区の合同試験を実施して試験方法をそろえたほか、試験用の検定砂や器具も統一している。一方、CSGを製造する連続ミキサーの能力をフル活用するため、ダンプトラックの台数・運行方法なども指導した。


 現地でのCSG製造には、MAC Linksの要素技術が織り込まれている。CSGは材料の調達が容易な半面、岩種のバラツキ、天候などによる材料変化が課題となる。プラントからベルトコンベヤーを分岐させ、CSG材の粒度や含水率を自動計測する品質管理システムは、材料の変化を早期に察知でき、効率的できめ細やかな品質管理を可能とする。
 プラントには自然落下によって材料を効率的に混練できる連続ミキサー「M-Yミキサ」を組み込み、ICカードによるダンプトラックの出荷・運行管理システムなども採用した。前田JVは施工は担っていないものの、ICT(情報通信技術)を駆使して施工管理する技術メニューも用意している。
 現場を束ねる中島具威(なかしま・ともい)所長は、「地元建設会社向けに品質の高いCSGを供給し、防潮堤の早期完成に貢献したい。安全には十分配慮していく」と意気込む。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【現場最前線】600トンのアーチ橋を横移動! 名古屋市の「中川橋」架替え 名古屋市港区の中川運河に架かる「中川橋」の架け替えで、アーチ橋(1930年架橋)を横取り工事を行った=写真。現橋をいったん北(上流)側に約37m移動し、新設した下部工に移し替える(旧位置より河口側へ5mへ移動)もので、2017年の全体完成を予定。移動工事は横河工事が担当している。 6月26日から28日の工事では、垂直方向に反力を取る油圧式スライドジャッキと水平にアームを伸張して横取りする機構を備えた水平ジャッキの2種類を使用した。 施工の手順… Read More
  • 【現場最前線】「地域からの信頼が第一」東京都建設局2現場の取り組み 暫定的なモデル道路を整備した放射5号 兵庫橋北側の環境施設帯(築堤+歩道) 道路や河川の整備といった公共事業を進める上で、欠かすことができないのが地域住民とのかかわりだ。プロジェクトの大小にかかわらず、行政が進める1つひとつの事業は地域住民の理解の上に成り立つ。東京都第三建設事務所の「放射第5号線(杉並区久我山2-3丁目間)」と「妙正寺川鷺の宮調節池」は、工事の発注者となる行政や実際の工事を担う建設企業が、計画から施工段階に至るまで地域に積… Read More
  • 【現場最前線】八高線直下を重層立体化 58mをHEP&JESで抜く 東鉄工業・佐藤工業JVは、JR八高線北八王子・小宮間の「石川こ道橋新設工事」に本格着手した。中央自動車道と八高線が交差する厳しい施工環境の下、鉄道運行、高速道路の機能に支障を与えずに線路下に非開削でトンネルを築造するため、58m区間に「HEP&JES工法」を採用し、鉄道工事のエキスパートとして培ってきた技術力を生かし、万全の体制で施工を進める。 ◇非開削でトンネル築造  同工事では、東京都八王子市石川町を起点に宇津木町(八王… Read More
  • 【現場最前線】急峻な地形を縫って進む工事用道路 釜石山田道路 伐採跡が道路のルートになる 東日本大震災からの復興に向けたリーディングプロジェクトとして、異例の早さで整備が進められている三陸沿岸道路の釜石山田道路。このうち、東北地方整備局南三陸国道事務所(柴田吉勝所長)が所管する山間部に位置する大槌・山田地区では、大規模構造物の前段となる土工工事が、地元企業の手で進められている。 急勾配の工事用道路 ◇波板地区道路改良  その1つが、岩手県大槌町で行われている波板地区道路改良工事(施工=佐々… Read More
  • 【現場最前線】営業線を10本またぐ難工事 首都高横浜環状北線の新子安鉄道交差部 横浜市神奈川区子安台から、JRの横須賀線、東海道本線、京浜東北線と京浜急行本線の直上約12mをまたぎ、緩やかな曲線を描きながら生麦方面に伸びる巨大な橋桁。この施工中の跨線道路橋は、横浜環状道路の北側区間を形成する横浜環状北線の一部で、鉄道営業線10路線に加え国道15号、横浜市道をまたぐ橋桁7本と基礎・橋脚6基を建設する。国内でも類を見ない難工事に挑んでいる鹿島・前田建設・京急建設JVの山崎秀治所長は、「鉄道の運行を阻害せず、そして工期を厳守す… Read More

0 コメント :

コメントを投稿