2016/03/19

【現場最前線】避難指示解除までに復旧目指せ! 福島県・常磐線室原川橋りょう工事


 東鉄工業は、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、震災5年後も不通区間の常磐線竜田~原ノ町間のうち、浪江(福島県浪江町)~小高(南相馬市)間に位置する全長108mの室原川橋りょうの復旧工事を進めている。東日本旅客鉄道水戸支社が発注、現場周辺の避難指示解除が予定されている2017年春の運転再開を目指して工事を急ぐ。現場は浪江駅から北に約1.1㎞にあり、いまも居住制限区域または避難指示解除準備区域に指定されている。地域住民の避難生活が続く中、早期帰還に向けた重要な社会インフラの復旧への期待は大きい。

 工事では橋脚の補強と線路の復旧を実施。大型土のうで流水部(水路)を切り回し、川底を露出させて施工地盤をつくってから、500t油圧ジャッキ4台をセットし、だるま落としのように中央部がずれている橋脚を元の状態に戻す。さらに基礎天端まで掘削して、周囲に20cm厚の鉄筋コンクリートを巻き立て、橋桁の沓座と変形した橋台部を修繕し、砕石を入れてレールを復元する。渇水期中の5月末までに河川内の工事を完了させる予定だ。

2016年2月段階

 作業員は約40㎞離れた居住制限解除区域から通勤。現場への入退場は有人ゲートで確認を受ける。ゲートのある国道6号は、他地域で従事する除染作業員らの利用もあり常に渋滞するなど、多くの制約条件下で作業を進めている。
 齋藤晃監理技術者は「地域の復興の礎となる重要な任務であり、復旧した鉄道が地域の活性化に結びつくことを願って工事を急いでいる」と使命感を燃やす。高橋聡工事管理者も「周辺には震災で壊れた住居もあり、他人ごととは思えない。気を抜かず、与えられた工期内で無事故完遂したい」と意気込みを語る。
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