P-3C型対潜哨戒機などが離着陸を繰り返す海上自衛隊下総航空基地の正面に位置する、千葉県柏市の同県水道局沼南給水場用地内で、飛島建設が調整池の築造工事を行っている。現場上空が基地滑走路の直線上にあるため、高さ制限が課せられた厳しい施工条件の下、現場を指揮する山口澄靖所長は「レーザーバリア警報システムを設置するなど作業時に制限高さを越えないよう工夫しながら、慎重に施工を進めている」と説明する。
沼南調整池築造工事は、千葉県、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、習志野市、八千代市の1県7市に水道用水を供給する北千葉広域水道企業団が発注。災害や水質事故で流山市に所在する北千葉浄水場から送水できなくなった場合に備え、沼南給水場の敷地内に新たな調整池を設置する。
現場上空を下降する自衛隊機 |
工事では、約1万㎡の広大な敷地の東側に1号調整池、西側に2号調整池を築造。その有効容量は1池2万6700m3の合計5万3400m3。1池当たりの規模は長さ113m、幅40m、内空高7.8mで、調整池の築造に加え、場内連絡管の敷設、電気設備などを担う。工期は2015年2月20日から18年3月23日まで。
通常であれば桟橋を仮設し、躯体構築を一気に進めることもできるが、高さ制限に加え、東側に既設配水池があり、西側と南側にしか現場を出入りするゲートを確保できないため、「1池の躯体を6ブロックに分けて北側から順次構築を進めている」(斉藤行治現場代理人)という。
その手順は、1号、2号調整池の各1、2ブロックを同時に構築し、それを3、4ブロックまで進め、作業ヤードの確保が難しい東側の1号調整池の5、6ブロックを先行して構築後、西側の2号調整池の5、6ブロックを構築する流れ。取材当日は1ブロック目の底版コンクリート打設が完了し、壁部分を施工している段階だった。
高さ制限により、施工基面から高さ12-14m以内での作業が求められる。構造物の高さが9mあるため、その上空はわずか3-5mの空間しかなく、「まるで見えない屋根が架かっているようなもの」と山口所長は表現する。
レーザーバリア警報システム |
このため、レーザーバリア警報システムを現場の東西南北に1カ所ずつ設置。制限高さからマイナス0.5mにレーザーバリアを張り巡らせた。そのバリアにラフタークレーンやコンクリートポンプ車のブームなどが接触すると警報が現場に鳴り響く。制限高さからマイナス1mの位置には赤い明示旗も掲げている。
取材当日も現場上空を基地に向かって降下する自衛隊機が姿を見せ、その距離の近さに驚かされた。斉藤現場代理人は「外周を親杭横矢板、鋼矢板で土留めしており、親杭を打設する際、通常であれば一般的な杭打ち機を使用するが、高さ制限で使えないため、アースオーガ付バックホウで低い位置から打設し、鋼矢板も2分割して短くしたものをつなぎながら圧入した」と振り返る。
着工して1年が経過し、重機主体の掘削工事から人が主体の躯体工事へと移り、最大100人規模の人員が作業に当たる。「高所や狭あいな場所での作業もあるため、安全設備に留意し、コミュニケーションを取りながら無事故・無災害で竣工させたい」と斉藤現場代理人は表情を引き締める。
17年4月をめどに躯体工事が完了し、その後、埋め戻し工に入り、内部の設備工事などを並行して行う予定。山口所長は「若手の技術職員が多く配置されているが、土工、躯体、設備など工事が多岐にわたり、勉強になるため、ものづくりと人づくりを一緒に進めていきたい」と明かす。
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