2014/12/05

【3D設計モデル】「ザハ・ハディド」展、協力の真意を聞く ダッソー・システムズ

東京都新宿区の東京オペラシティアートギャラリーで「ザハ・ハディド」展が開かれている。ザハ氏の設計した建築のスケッチや模型が数多く展示される中で、ひときわ目を引くのは立体ディスプレーで表示された北京の複合施設「Galaxy SOHO」の映像展示だ。来場者は専用眼鏡を掛けることで、臨場感を持ってザハ建築を体感できる。技術協力したダッソー・システムズ執行役員3DSバリューソリューション事業部の手塚成道氏=写真=に参加の狙いと将来の戦略を聞いた。

 同社の3次元CADソフト「CATIA」は曲面の多い建築や競技場といったデータ量の多い建築の設計に適しており、ザハ・ハディドやフランク・O・ゲーリーなどが使用している。今回展示された「Galaxy SOHO」の映像も「CATIA」の設計データをそのまま使用している。
 手塚氏は「3次元映像は地域や年齢、文化を問わず誰でも分かりやすく情報を共有できる世界の共通言語だ。デモンストレーションを通じて、2次元図面から3次元を立ち上げることに慣れていない一般の方々にも設計者の意図を体験してもらいたい」と語る。
 展示映像は外観が中心となるが、設計データを使用しているため技術的には建築の内部や設備部分まで立体映像で体験できる。ただ見た目を整えるのではなく「科学的に見えるものだけを扱いながら、一番分かりやすいかたちで示している」という。
 一方で、3次元設計モデルの可能性は「見た目や分かりやすさにとどまるものではない」とも。特に3次元設計の導入が先行している自動車製造業分野では、設計段階でシミュレーションを繰り返すことで、作業時間と試作車製作コストを削減して製品の性能を向上させた事例もあると指摘し、「3次元モデルをシミュレーションすることで建築における設計の質そのものを向上させる可能性もある」と強調する。現時点では曲面などの複雑な形態をつくるツールとしてみられがちな3次元設計モデルだが「見た目、品質、作業効率を改善することができる」との考えを示す。
 また、将来的には「設計・施工段階の活用から、もう一歩先を考える必要がある。施主や実際の使用者にとっても利益となるモデルを目指す必要がある」とし、施設運用や管理の段階にも大きな力を発揮すると語る。
 重視するのは、異なる業界・産業間で共有したノウハウだ。同社では医療分野における分子レベルのシミュレーションから宇宙開発まで幅広く3次元モデルによる設計・シミュレーションを手掛けており、それぞれの分野で蓄積した経験の共有化を進めている。
 建築設計の分野でも、製造業におけるノウハウを生かした生産性向上やプラント設計の知見を生かした環境・エネルギーへの配慮といった可能性があるという。「他社のユニークなやり方を真似ることで産業の変化は生まれる。建設分野も医療や自動車といった他産業における3次元モデルの使い方を取り入れることで、相互に革新が生まれるはず」と力説する。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 11月6日までGA galleryで「安藤忠雄建築展」 東京都渋谷区の「GA gallery」は、「アジアでのプロジェクト」と「時間とともに成長する建築」の2つをテーマに「安藤忠雄建築展」を開いている=写真。  安藤氏が海外での仕事を始めたのが欧米を中心とする1990年代だが、2000年代に中国などアジアに集中。安藤氏は「アジアであるがゆえに共通部分も多いが、差異がより意識される。その文脈を理解して建築を造るのは骨が折れるが、私なりに『場所と建築の対話』を考え取り組んでいる」としている。「成長する建… Read More
  • 伊東豊雄氏の「みんなの家」で芋煮会  東日本大震災の被災者に「心が安らぐ居間のような、始原の建築を」と、建築家の伊東豊雄氏が提案した集会施設「みんなの家」が仙台市宮城野区の仮設住宅団地内に完成=写真、26日、落成式と仮設住宅の住民による芋煮会が開かれた。 熊本県が、くまもとアートポリスの一環として実施した、初の県外事業となる。芋煮会では地酒も振舞われ、伊東氏も交えて住民や関係者らが夕方までにぎやかに歓談した。 みんなの家は、仙台市の協力を得て、同市宮城野区福田町南1丁目… Read More
  • 「みんなの家」がヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に実物展示 2012年9月から11月下旬まで、イタリアのベネチアで開かれる「第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」に、伊東豊雄氏らの「みんなの家」が実物展示されることになった。テーマは「ここに、建築は、可能か」だそうで、伊東氏は、東日本大震災後の建築のあり方として、参加する3人の若手建築家と「原初の家」がどのようなものかを議論して、4人で一つの「みんなの家」をつくって、ベネチアの会場に展示すると話す。  参加するのは伊東氏のほか、建築家の乾久美子、藤… Read More
  • 横浜という都市について朝まで議論/ヨコハマ研究会が書籍発刊でパーティ 「これからどうなる?ヨコハマ研究会」が、書籍『これからどうなるヨコハマ』を発刊した。同研究会は、横浜の身近にありながら議論できていない都市の具体的なテーマを探るため、2011年に発足。横浜・馬車道の「BankART School」で展開した議論をまとめ、書籍として出版したものだ。  書籍の出版にあわせて21日、横浜トリエンナーレの特別連携プログラム「新・港村」の会場で出版記念パーティーも開いた。  パーティーでは、佐々木龍郎佐々木設計事務所代表… Read More
  • 山梨県建築文化賞に「山中湖楓深庵」と「OLD→NEW Project」 「山中湖楓深庵」撮影:松村芳治   2011年度山梨県建築文化賞の受賞作品が決まった。建築文化賞には『山中湖楓深庵』と『OLD→NEW Project』が選ばれた。表彰式は11日にベルクラシック甲府(甲府市)で開く。  同賞は、景観と機能などに優れた建築物の表彰を通して、建築文化の高揚や魅力と風格のある文化的で快適なまちづくりを推進するため、山梨県や山梨県建設業協会などで構成する山梨県建築文化賞推進協議会が90年から実施している。… Read More

0 コメント :

コメントを投稿