2014/12/04

【現場最前線】貴重な土木遺産を守れ! 東鉄工業のJR内房線 山生橋梁塩害対策

東鉄工業は、JR内房線江見・太海間に位置する山生(やもめ)橋梁で、電気防食工法による塩害対策工事を進めている。橋梁は、長さ171mの単線鉄道橋として日本初の鉄筋コンクリートT型梁形式を採用し、1924年に竣工。従来のアーチ型から桁式構造へと転換する記念碑的構造物として、2012年度に土木学会の土木遺産に認定されている。写真は山生橋と監理技術者の長瀬氏(東鉄工業)。

 山と海に挟まれた狭あいな足場での作業、列車を通過させながらの昼間作業、深夜帯の資機材搬入出などの厳しい条件を、高い技術力と安全対策で克服しながら、貴重な土木遺産を守るための工事は着々と進んでいる。
 同橋は、建設から90年が経過し、経年劣化と塩害で桁が損傷しつつあったことから、東日本旅客鉄道(JR東日本)千葉支社が躯体内の鉄筋に電流を流して腐食を防止する対策工事を発注。13年9月から工事着手し、15年度までの完了を目指している。
 施工範囲は、鉄筋コンクリート桁の全16径間。外部電源方式によるチタン溶射方式を採用し、はつり出した鉄筋に外部電源のマイナス側端子、既設コンクリート表面に溶射したチタンにプラス側端子をそれぞれ接続して1mmアンペア-0.3mmアンペアの微弱電流を流すことで鉄筋の腐食を防止する。
 橋脚には落橋防止装置が設置されており、溶射作業が困難な狭い個所では、チタン溶射の代わりにアルミ防食板を桁下に取付けるアラパネル(ALAPANEL)工法を採用している。
 現場が海岸線に近接していることから、桁下面や側面すべてにつり足場を設置し、側面通路から資機材を持ち込み、狭あいな足場内で作業を進める。電源装置や仮設足場材は、線路を走るクレーン付き軌陸車両で終電後の夜間に搬入した。
 「土木技術者として、歴史的な構造物のメンテナンス工事に従事することができて感慨深い」という監理技術者の長瀬晃三氏(東鉄工業)は、狭い現場条件下で、「列車に物を当てない、作業員が落ちない、線路に物を忘れない」などの安全対策を徹底している。
 今後も作業場面ごとのリスクを見極め、「やるべき対策を確実に実施して、最後まで無事故で工事を完遂させたい」と気合を込める。
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