2015/04/29

【南極地域観測隊】10項目の作業終え第56次夏隊任務終了! 佐藤利明さん(飛島建設)

第56次南極地域観測隊(夏隊)の隊員として、昨年11月に日本を出発した飛島建設の佐藤利明氏が、その任を終えて3月に帰国した。第55次隊に続く2度目の派遣で、新汚水施設仕上げ工事、風力発電機設置工事、第2車庫兼ヘリ格納庫建設工事などをほぼ計画どおりに完了。「前回一緒に渡航した第55次隊の越冬隊との1年ぶりの再会がとてもうれしかった」と振り返り、「もう十分やり切ったが、次があるならば越冬隊として行きたい」と笑顔を見せた。
 今回の作業内容は、(1)新汚水施設仕上げ工事(2)風力発電機設置工事(3)第2車庫兼ヘリ格納庫建設工事(4)自然エネルギー棟オーバースライダー改修工事(5)コンクリートプラント運用(第2車庫均し・基礎・土間、基本観測棟均し、ガス圧消火装置基礎)(6)建築物の補修工事(光学観測棟・情報処理棟屋根防水、観測棟天窓設置、見晴らしポンプ小屋窓交換)(7)コンテナヤード補修工事(8)建築物の解体工事(9)基本観測棟均しコンクリート打設工事(10)支援工事--の10項目。
 このうち、自然エネルギー棟オーバースライダー改修工事の一部、見晴らしポンプ小屋窓交換を除いた作業を終えて帰還した。

佐藤利明氏
前回、第56次に向けて段取りして帰ってきたため、「3カ所に分散して置いてあった材料や工具のある場所を把握していたし、各隊員の行動スケジュールも経験則からある程度分かるため、人員の配置など段取りが前回に比べてしやすかった」とし、「今回が初めてだったら、この物量をこなすのは厳しかった」と振り返る。
 新汚水施設は、第53、54次と2年連続で観測船「しらせ」が接岸できず、前回の第55次で資材を運び入れ、配管の架台を建設。今回は、中継槽を囲う小屋と温水配管、放流管の埋設を行った。第56次の越冬中に既存の汚水処理施設から切り替える段取りを行い、第57次の夏から運用を開始する。
 風力発電機も第55次で資材を搬入。第53、54次で基礎を打設済みだったため、今回は1号基の上部の組み立てを行った。高所作業のため、「他の観測隊員が足場を組んだり、ボルトを締めたりするため、安全には十分注意を払った」という。当初は総足場を予定したが、日数的に作業が間に合わなくなるため、同じく設営に携わる東光鉄工(秋田県大館市)から派遣された隊員と相談し、足場の計画を練り直した。
 具体的には「コの字に足場を組み、ライズタラップと作業ステージを設置して対応するとともに、作業する隊員には手順を説明し、不慣れな隊員にはブレースのあるところで作業するよう指示した」。2号基の資材も持ち込んでおり、第57次で設置する予定だ。
 第2車庫兼ヘリ格納庫は、土間だけ残っていた既存建物の跡地に、その土間を一部拡張してドーム型の小屋を建設。自然エネルギー棟オーバースライダー改修工事では、霜により破損したパネルを交換した。当初はパネルの交換に加え、断熱材も張る予定だったが、「間に合わなかったため、越冬中に作業を行うことになった」という。
 しらせの接岸が遅れ、作業工程も後ろ倒しになり、「作業自体はつらかった」としながらも、「第56次隊、そして第55次隊の越冬隊の仲間と一緒に終わらせようという目標を持った作業が楽しかった」と語る。

◆国立極地研から表彰状

左から佐藤氏、中出常務執行役員、和泉澤部長
飛島建設は1994年から毎年、日本南極地域観測隊の設営部門に多くの技術者を派遣しており、これまでに建築技術者14人、土木技術者2人を送り、うち5人が2回の派遣を経験。その功労をたたえ、14日に東京都港区の明治記念館で開かれた帰国報告会で国立極地研究所から表彰された。
 帰国報告会には、佐藤氏のほか、中出裕康常務執行役員建築事業本部長、初代派遣職員の和泉澤統一首都圏建築支店安全品質環境部安全品質環境チーム担当部長らが出席し、白石和行国立極地研究所長から中出常務執行役員建築事業部長に表彰状が手渡された。
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