2015/04/26

【現場最前線】施工に工夫積み重ね、制約をクリア! 7年かけ完成した町田街道南橋改築

東鉄工業が施工していた町田街道南橋改築工事(東京都町田市原町2)が、約7年の歳月をかけて2月末に完成した。周辺に店舗や住宅が密集し、片側1車線道路で作業場所の確保が難しいなどの厳しい現場条件の下、安全面に細心の注意を払いながら、高度な技術力とチームワークで難局を切り抜けた。一部の作業を昼間でも可能にするなどの工夫を重ね、約3か月の工期短縮も図った。

 同工事は、町田街道の交通量増加や通行車両の大型化に伴う老朽化対策として、東京都が事業化。東京都八王子市東浅川町の国道20号から町田市鶴間の国道246号を結ぶ町田街道は、町田市街を通行する片側1車線の道路で交差点や信号が多く、渋滞が発生しやすい。
 このため、JR横浜線に架かる町田街道南橋(長さ24m、幅16.5m)を架け替えた。工事は東京都が東日本旅客鉄道(JR東日本)横浜支社に委託し、2008年5月に東鉄工業が受注した。
 施工に当たっては、まず仮歩道橋を設置し、既設桁の撤去と新桁の架設を4回に分けて順次作業を進めた。現場は周辺に店舗や住宅が密集し、片側1車線のため作業場所の確保が難しいため、既存道路に常設作業帯を設置するとともに、夜間に1車線の交互通行の規制を実施しながら作業した。
 狭い作業帯と1車線規制だけでは、大型重機械の配置が難しく、JR横浜線の上空作業は、すべて終電後の深夜短時間作業での施工となるなど、多くの制約をクリアしながらの工事は試練の連続だった。

山口恭平現場代理人(東鉄工業)
着工当初から工事を担当した山口恭平現場代理人(東鉄工業)は、「店舗や住宅の密集地で、深夜まで車の往来が激しく、町田街道を常時規制しての作業は、昼も夜も気を抜くことができなかった」と振り返る。
 大型クレーンによる旧桁撤去と新桁架設を限られたヤード内で130tクレーン2台の合吊り作業にするなど、極めてリスクの高い工法を選定せざるを得ない場面もあったが、高い技術力と蓄積してきたノウハウをフルに発揮し、難局を乗り切った。
 新桁の搬入や旧桁の搬出作業は、前日までに近隣に最小限確保した作業ヤードに仮置きした。また、昼夜作業を可能にするため、JR横浜線の架空電線上に架かる作業ヤードには、2万ボルトの耐電試験に合格した「耐電ゴムマット」を床面に敷き詰めた。こうした施工上の工夫が功を奏し、約3カ月の工期短縮を実現した。
 7年がかりの工事の完成を迎え、山口現場代理人は、「JR横浜線の停電時間の作業を耐電ゴムマットを活用することで昼間作業に変え、工事期間の短縮を図るなど工夫を重ねた。毎月の定例会議では、発注者や関係者に仕様の具体化や各種変更提案などに対して迅速に対応していただいた。近隣住民を始め、JR、東京都に改めて感謝したい」と喜びをかみ締める。
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