2015/04/04

【技術裏表】サッシ工事に「非溶接工法」 火災リスクなしで現場は歓迎

「地味な技術だが、見えない部分の効果は大きい」。栃木県大田原市内で消防署庁舎を施工している那須土木JVの阿久津敏之所長は、サッシ工事に採用した非溶接工法の効果を、そう語る。4年前にYKKAPが開発した同工法は採用現場が累計で600件を超え、最近では公共工事にも採用が増えている。

 一般的にサッシの取り付け作業では、コンクリート躯体に埋め込まれたアンカーと、サッシを溶接によって仮固定する。これを粘性の高い樹脂剤で固定するのがYKKAPの非溶接工法だ。「火災リスクを取り除ける」と、現場からの評判も上々だ。2013年度に全国の250現場に採用され、今年度は1月末時点で既に265現場を突破し、着実に採用数を伸ばしている。
 YKKAPは『EXIMA31』などボリュームゾーンのサッシ製品を非溶接対応にするなど、工法を製品の差別化技術として積極的に売り込んでいる。商品企画部ビル商品企画グループエントランス商品リーダーの宇田川敏規氏が「公共工事採用の道筋も整ってきた」と強調するように、13年度に入ってからは公共案件が採用現場の1割に達している状況だ。
 非溶接工法の広がりを背景に、近年は設計者から公共工事の採用に向けた問い合わせが目立ち始めていた。公共建築工事標準仕様書ではサッシをコンクリートに固定された鉄筋類に「溶接して留め付ける」との記載はあるが、品質や性能、環境の保全などに有効な工法の場合は監督職員との協議で採用できる。国土交通省からは「物件ごとに提案いただくのはかまわない」とのアドバイスをもらい、採用に弾みが付いた。

那須土木JVが施工する栃木県内の消防庁舎
大田原市内の防署庁舎工事でも、設計者のフケタ設計が仕様に盛り込み、現場導入が決まった。JVスポンサーの那須土木にとっても初の試み。阿久津所長は「次の現場でもぜひ使いたい」と前向きな反応を見せる。実は非溶接工法の採用によって、サッシ職人の作業手間は増える。通常の溶接作業では前工程の型枠大工が墨出しをして埋め込みアンカーの位置を決める役割を担うが、非溶接ではサッシ職人が墨出しを行い、埋め込みアンカーに代わる打鋲ピンの打ち込み作業も手掛ける必要がある。
 「確かにわれわれの作業手間は増えるが、火災リスクがなくなることは何より喜ばしい」とは、消防署庁舎の現場で作業するサッシ職人の土井寛さん(土井工業社長)。既に非溶接工法の経験が10現場を超えるベテランだ。その的確な作業を見ながら、阿久津所長の頭にはアイデアが浮かんでいた。「非溶接用の埋め込み金具があれば、サッシ取り付けも従来の工程で作業できるはずだ」。工法への前向きな改善提案が出るほど、非溶接工法は現場に受け入れられ始めている。
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