構造部品の設計最適化ツールを建築設計に生かす。3月、東京・芝浦のシバウラハウスで、一風変わったワークショップが開かれた。建築家の廣瀬大祐氏が実行委員長になり、チームラボアーキテクツの河田将吾氏、Orange Jelliesの堀川淳一郎氏、竹中工務店東京本店設計部の宮下信顕氏の3人がチームリーダーとなって、応募してきた学生12人と巧みにデザインスケッチを完成させた。画像は宮下チームのデザイン。
今回開かれたのは、「第1回DCIEワークショップ」。DCIEとは、Design Challenge by INSPIRE and EVOLVEの略だ。「INSPIRE」は航空機の翼のリブやバックホウのアームといった構造部品を有限要素法(FEM)解析をもとにして最適化する設計ツール。「EVOLVE」は、3次元設計データをレンダリングして、写真のように表現できるソフトだ。両製品ともアルテアエンジニアリングが開発して工業界で使われている。
特にINSPIREは、もとになる3次元形状に、応力を設定すると、余分な構造を自動で削る。逆に言えば見えない荷重負荷が見えるようになる。ワークショップでは、アルテア社からのスポンサーシップを受けて、1週間、ソフトを自由に使い、自分たちのアイデアを具現化した。
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河田チームのデザイン |
河田チームは、アンディ・ウォーホルの絵画を色相、彩度、明度に分解し、その階調からデザインを抽出する作品をまとめた。堀川チームは靴をテーマに構造解析したデザインを考案し、将来的には義足などにも応用できる設計手法を提案した。
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堀川チームのデザイン |
宮下チームは、西新宿の高層ビル街を題材に、まちが造られた40年前にINSPIREのような構造解析ツールがあったら、というアプローチで壁面緑化を取り入れた高層ビルをデザインした。それぞれの成果は3Dプリンターで実際に出力して展示した。
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プロの目で講評 |
最終講評でアルテア社のルカ・フラッタリ氏は「ソフトの開発側から見て、まったく新しい使い方を提案してくれた。斬新で、まじめに取り組む姿勢にも感心した」と話した。廣瀬氏も「非常に短い期間にもかかわらず、内容の濃い提案が生まれた。チームも、ゼネコンやプロデザイナーなど、毛色の違うリーダーのもとで、まったく違う提案が生まれて、興味深い」と評価し、夏にも第2回を開きたいと締めくくった。
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