2015/04/12

【逆BIM!?】今ある都市を、点群、画像を統合して3次元化 都市管理に応用

「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とは、逆の流れで3次元モデルを作成している」と、画面に映し出した名古屋市中心街の都市モデルを指差すのはインフォサーブ(東京都千代田区)代表の千葉次男氏だ。中日本航空(愛知県豊山町)の協力を得て地図情報、点群、画像を融合させた。「建物一つひとつをモデルとして認識しているからこそ、街全体の管理ツールとしても活用できる」と呼び掛ける。画像は名古屋中心市街の都市モデル。
 試作として名古屋市内の3次元都市モデルを完成させたのは1カ月ほど前。千葉氏は「ようやく満足できる成果を出せた」と手応えを口にする。同社では、都市モデル構築のスキームが革新事業をテーマにした中小企業庁の補助金事業に採択され、モデル構築の最適な枠組みを調査してきた。そこで2つの海外ソフトウエアに出会い、都市モデル作成の事業開始に合わせ、日本国内での販売代理店契約も結んだ。
 販売をスタートしたUVMシステムズ社(オーストリア)のテクスチャリングソフト『CityGRID』と、バーチャルシティシステムズ社(ドイツ)のモデリングツール『BuildingReconstruction』は、いずれも国際標準のデータ形式「CityGML」に準拠し、海外では都市モデルを高速に生成できる利点が高く評価されている。千葉氏は「これから2つのソフトをフル活用した都市のモデリング事業を展開していく」と説明する。

地図、点群、画像の3つを2つのソフトで組み合わせる
モデル作成には国土地理院が提供する2500分の1の基盤地図、点群、画像の3つを使う。具体的には点群から建物の屋根形状などを読み解き、そこから個別建物のモデルに都市のテクスチャーデータに張り付ける。試作した名古屋市内のモデル範囲は100万㎡規模。中日本航空の保有する対象エリアの点群や画像データを借り、試作モデルを完成させた。
 レーザー計測とデジタルカメラを搭載し、前後左右の斜め画像と直下画像の5方向から撮影できるヘリコプター航空計測システム『SAKURA』で調査測量業務を展開する中日本航空にとっても「都市モデル化へのアプローチは今後の大きな付加価値になる」と、調査測量事業本部技術部の都竹正志氏は考えている。「取得した点群や画像は計測データであり、国際標準に準拠したモデリング技術との連携は、新たな事業の可能性を広げるチャンスである」からだ。

中日本航空の航空レーザー計測システム『SAKURA』
SAKURAは高度300m-400mから5cm以内の誤差で計測できる。インフォサーブの千葉氏は「高度な計測精度を誇るSAKURAと、われわれの提供するソフトウエアの相性は非常に良い」と強調する。3次元モデルの精度を示すLOD(詳細度)では、点群と画像をベースとした都市モデルがレベル2、そこに建物形状や窓位置などを加えると、レベル3に引き上げられる。『BuildingReconstruction』で粗々の都市モデルを構築し、『CityGRID』でレベル3までの処理を行う。都市モデルの中に位置付ける個別建物モデルにも、細かく属性情報を規定すれば、詳細度はレベル4にまで到達する。
 欧州では、3次元モデルを活用した都市管理の動きが拡大しつつある。防災計画やヒートアイランド対策に加え、太陽光パネルの配置などにも3次元シミュレーションの利用価値は高く、住民への説明用ツールとしても有効だ。千葉氏は「都市モデルは一度構築すれば、さまざまな使い方ができる。試作した名古屋の都市モデルはわれわれが精度の高い成果を示せるという証し。これを足がかりに、都市のモデリング業務を本格化させたい」と意気込みを語る。
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