2016/04/07

【コンペ】最優秀は中村堅志氏 車いすテニス世界大会に向けた〝バリアレス〟なまちづくり


 「今までにない革命的な審査だった。街にあるハードルを取り除くのに建築に偏ることなく、いろいろな視点や新しい評価が見えた」。日本建築士会連合会の三井所清典会長は、自身が審査委員長を務めた「バリアレスシティ アワード&コンペティション」の講評でコンペの意義を高く評価した。同賞は、建築家の本多健氏や建築家で車いすテニスプレーヤーの本間正広氏らが中心となり、5月に東京で初めて開催する車いすテニスの世界大会に向け、誰もが訪問しやすい街の実現に向けてアイデアや取り組みを公募した。画像は最優秀の「えきまえエレベーター」。
 3月26日に東京都中央区のITOKI SYNQAで表彰式を開き、最優秀賞1作品、優秀賞として提案部門8作品、実作部門7作品を表彰した。本間氏が都内の飲食店で車いすを理由に入店できなかったことをきっかけに、同賞の創設に向けた活動が始まった。5月の車いすテニス世界大会を始め、2020年の東京パラリンピック開催で海外から多数の障がい者が訪日することが想定されるため、競技施設以外でも旅行者が訪れやすい、また来たいと思わせるまちづくりの実現を目指している。
 最優秀賞は中村堅志氏(一級建築士事務所中村建築)の「えきまえエレベーター」が選ばれた。ドローンなどで空撮した街の俯瞰映像を駅前に設けた約3m四方の室内で上映するアイデアだ。訪れた観光客はまるで駅前にある高層エレベーターに乗ったかのように街を一望できる。中村氏は「初めて訪れた旅行地の全体像をイメージでき、同伴した友人や家族と体験を共有できる装置になる。分かりやすさとイメージの共有はバリアレスの精神に通ずるものがある」と作品への思いを述べた。

講評でコンペの意義を高く評価した三井所審査委員長

 審査は三井所氏を委員長に、宮崎桂日本サインデザイン協会副会長、インテリアデザイナーの劒持良美氏、車いすテニスプレイヤーの齋田悟司選手、ケニア人建築家のディック・オランゴ氏、本間氏、本多氏の7人が担当した。

 最優秀賞以外の受賞作品は次のとおり(敬称略)。
 〈提案部門〉
▽「Come to Meow!マーク」花島咲輝、栗田始雪、小関裕紀子、高村泉水(お茶の水女子大)
▽「1000万人の英語教師プロジェクト」福庭奈保(関口雄三建築設計事務所)
▽「フローティングハザードデザイン」毛塚順次(会社員)
▽「車椅子散歩をサポートする緩勾配サイン」同
▽「傘のシェアシステム」林聯宇(京都精華大大学院)
▽「iroiro」佐藤文美、難波里華、平塚優都(北海道芸術デザイン専門学校)
▽「車椅子のある暮らし」青木麻里子、新倉梨加、大島百合子、堀内万央、小村千瑛、中居寿々子(お茶の水女子大)
▽「Help Me!アプリ」松村好夏、佐々木美緒、天坂有希、岩佐早希子、金子理紗(同)。

 〈実作部門〉
▽「車椅子ウォーカー」織田友理子(ODA)、織田洋一(同)、山口真弓(同)、金井節子(一級建築士事務所大内環境デザイン研究室)、大内宏友(同)
▽「きんしゃい有田豆皿紀行」名児耶秀美(アッシュコンセプト)、佐賀県有田焼創業400年事業実行委員会(ARITA SELECTIONプロジェクト)
▽「一瞬亭」畔柳昭雄(日大)、佐久間大和、大川薫平
▽「GIFT KIOSK NAGOYA ESCA」長谷川聡(フルプロダクトデザインスタジオ)、山内幸治(ジェイアール東海コンサルタンツ)、松永絢子(同)、鈴木理夏(成和)、川口博之(バウハウス丸栄)、縣和彦(東海キヨスク)、酒井真一(同)、伊藤未沙(同)
▽「廃駅『博物館動物園駅』の進化・再生」森徹(NPO上野の杜芸術フォーラム)、臼田浩之(同)、溝内公洋(同)、加来悠(早稲田芸術学校)、植野糾(ランドスケープデザイン)、若松久男(若松建築研究所)、熊井芳孝(クマイ商店)、熊井千代子(ケーズグリーン・ギャラリー)、近藤多聞(東大)、松本実沙音(同)、横山由佳(同)、池上慧(同)、吉田渉(同)、秋月優里(同)
▽「閑々居」北条和子(閑々居)▽「大井町西口ロータリー ガラスのサンキャッチャー」杉山容子(EOS Plus)--となっている。
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