2016/04/02

【建築】A・レーモンドのモダニズム建築を再生 愛媛県鬼北町庁舎改修


 国の登録有形文化財に指定され、日本近代建築の父・アントニン・レーモンドの爛熟期のモダニズム建築作品として名高い愛媛県鬼北町庁舎の改修工事が竣工し、2月29日から業務を開始した。旧広見町庁舎として1958年に完成した鬼北町庁舎は、デザインの完成度の高さやHPシェルという当時としては革新的な技術の採用など、その建築的価値が高い評価を受け、2012年に登録有形文化財に指定された。

 改修工事では、文化財としての意匠を残しつつ、耐震補強を図り、庁舎機能を充実させた。町職員が民間企業のオフィスを見学するなど研さんを積み、庁内で議論を重ね、計画に反映させた。設計はアントニン・レーモンドの意思を受け継ぐ、レーモンド設計事務所が担当、モダニズム建築を再生した。施工は増岡組・愛媛建設JVが改修の趣旨や設計意図を読み込み、技術力を結集し、関係者や町民の期待に応えた。

■設計メモ
 登録有形文化財としての価値の保存とともに、明るく開かれた庁舎への更新を目指した。外部は打放しコンクリートの表情、素材感を失わないよう外部露出配管を撤去、洗浄補修を施し建設当初の外観に戻した。既存のスリムなスチールサッシュは、コンクリートと取り合う部分を残し引違部のみスチールのカバー工法にて造り替えて機能性と気密性を高め、断熱のためペアガラスとし、屋上は断熱防水に改修した。

3階の議場

 耐震補強については、内部の壁の増し打ち、1階の柱を鋼鈑巻、妻側の開口部を壁にする等の方法によりファサードを変えず重要度係数1・5を確保した。
 内部については1階に町民対応の事務スペース、2階には町長室、副町長室、執務室等、3階は議場、議会関係諸室のゾーニングは基本方針としながら町民、職員が使いやすい平面計画とし、漆喰による内装仕上げの復旧、設備配管の納まり、伝統ディテールの保存、復元等により、当初の空間イメージを踏襲した。
 設備的には照明器具はすべてLED化し、空調設備を更新することにより省エネ化を図るともに執務室の床は全てOAフロアを設置しネットワーク配線を可能にした。

1階階段・ホール

 エレベーターの新設によるバリアフリー化を図り、男女一体であったトイレを男女に分け多目的トイレも設置整備し、別館との間を芝生の中庭として整備、アメニティ化を図った。
 長い間使われてきた庁舎が生まれ変わり、今後一層町民に愛され、使い続けて行かれることを願う。
株式会社レーモンド設計事務所代表取締役 三浦敏伸

◆工事概要
▽工事名称=鬼北町庁舎改修工事
▽発注者=愛媛県鬼北町
▽建設地=愛媛県鬼北町大字近永800-1
▽建築面積=583.5㎡
▽構造・規模=RC造3階建て延べ1750.4㎡
▽設計・監理=(株)レーモンド設計事務所
▽施工=増岡・愛媛特定建設工事JV
▽工期=2015年4月30日-2016年2月10日
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