2016/04/02

【アークヒルズ】開業30周年 時代をけん引する「立体緑園都市」、東京の〝磁力〟向上へ


 森ビルが主導した、民間による日本初の大規模市街地再開発事業「アークヒルズ」が31日に開業30周年を迎える。アークヒルズは職住近接、都市と自然との共生、文化発信といった森ビルの都市づくりの理念を「ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)」で具現化しており、現在のヒルズシリーズの原点となっている。30周年を機に今後も、周辺エリアの進化とともに、時代をけん引する新たな価値を生み出し続ける。

 アークヒルズは1967年に森ビルが最初の土地を取得したのを発端に、69年から17年にわたり、関係権利者と地道な対話を重ねて86年に完成した。大規模オフィス、都心型住宅に加え、2000席のコンサートホール、本格的シティーホテル、放送センターが融合した「複合都市」の誕生は耳目を集め、開業後もビジネス、住居、緑、コミュニティーなど多様な側面で先駆的な取り組みを行ってきた。
 この30年間、交通インフラ整備や、複数の大規模開発など国際新都心の形成に向け、アークヒルズを含む周辺エリアは変貌を続けている。周辺地域の大規模オフィスのストックは86年の61万4300㎡から15年に124万8200㎡、ハイグレードレジデンスは当時600戸程度のストックが15年に3000戸へとエリア全体が大きく成長した。

アークヒルズで行われたイベント

 まちの持続的発展に向け、コミュニティーの形成にも注力した。86年に会員制の社交場となるアークヒルズクラブ、87年に地元の住民・店舗・企業と自治会を形成、88年にはアーク都市塾(現アカデミーヒルズ)が発足した。
 96年には、「訪れたくなる店舗」をコンセプトにオフィスビルの商業施設を、2003年から05年には入居を検討する企業のニーズに対応するため、オフィス部分を最新設備に更新するなど、大規模オフィスビルのリニューアルの先導的役割も果たした。このほか、02年に賃貸ビル国内初のセキュリティーゲートを導入、09年にはヒルズマルシェを開始した。

四季が感じられるアークガーデン

 都市緑化では、竣工当時には珍しかった屋上緑化を導入。97年には常緑だった屋上庭園を四季が感じられる「アークガーデン」としてリニューアルするとともに、ガーデニングクラブを発足させた。開発当時に23.3%だった緑被率が現在では43.53%へと拡大した。
 現在、森ビルのタウンマネジメント事業部でアークヒルズエリア運営グループチームリーダーを務める田中巌氏は、こうした都市緑化の取り組みについて「緑の量だけではなく質にもこだわっている」と語る。都心にまとまった緑をつくりグリーンネットワークができることで、既存の皇居、赤坂御用地、青山霊園、浜離宮を鳥・昆虫が行き交い、生態系が守られる効果がある。

会員制工房「TechShop Tokyo」

 30周年を機に新たに、会員制の工房「TechShop Tokyo」、独立性ベンチャーキャピタルが入居する「KaleidoWorks」、新しい都市生活をめぐるリサーチ・教育・実験・実行の場「WIRED Lab・」と、3つの未来のイノベーション拠点施設も開設した。
 アークヒルズに集まるさまざま発想や志を持つ人が交流することで、「まちを舞台に、アイデアがビジネスになるサイクルが形成される」(田中氏)ことに期待する。
 今後のアークヒルズについては、「常にその時代をけん引してきたこの街を舞台に次世代の挑戦を続けるとともに、周辺エリアを含めたマネジメントを行うことで、東京の磁力向上につなげていきたい」(同)と見据える。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【TOTO】体感し驚け! 成田空港にトイレの最先端技術と文化を発信する「GALLERY TOTO」オープン 成田空港にTOTOが設置したトイレ体感施設「GALLERY TOTO」がオープンした。トイレを使用する「体感」を通じ、日本のトイレの最先端技術とトイレの文化を世界に発信する施設として期待が集まる。設計したクラインダイサムアーキテクツ(東京都渋谷区)のアストリッド・クライン氏は、「トイレがアートになることを示し、使った人に驚きを感じてほしい」と語る。写真は映像を投影した外壁(撮影:DAICI ANO)。 内部から滑走路まで見渡せる ガ… Read More
  • 【水中切断ロボ】桟橋基礎の溶断を無人化可能に! 新潟潜水興業が開発 新潟潜水興業(本社・新潟市、高橋和彦社長)は、遠隔操作式の水中切断ロボットを開発した=写真。桟橋の基礎部分となる鋼管杭などの溶断を無人化することで、可燃性ガスの小爆発による事故を未然に防止する。また、安全性だけでなく、経済性も優れており、港湾構造物の老朽化対策への寄与が期待される。同社ではこの先進技術に対する特許を申請中。将来的にはNETIS(新技術情報提供システム)などへの登録を目指す方針だ。  桟橋撤去工事に伴う鋼管杭の切断は、潜水士… Read More
  • 【ワークショップ】メキシコ・パンアメリカン大で「2030年の都市づくりと家づくり」テーマに JMS 社会人向けのモノづくり活動の拠点FUTURE HOUSE Lab.を運営するJMS(東京都千代田区、富岡克朗代表取締役)は、メキシコ・アグアスカリエンテス州のパンアメリカン大学で6月17日から7月17日にかけて「モノづくりワークショップ」を開く。写真は2014年のワークショップ。  「2030年の都市づくりと家づくりを考え実践する」をテーマに設定し、同大の学生と建築土木技術を生かした未来の都市計画についての講義・実習・グループワークを実… Read More
  • 【鹿島】わくわく学ぼう! 子ども向けホームページ「カジマキッズアカデミー」 鹿島は、土木・建築の基礎知識や身近な生物を楽しみながら学べる、子ども向けホームページ(HP)「カジマキッズアカデミー」=写真=を公開した。将来を担う子どもたちに建設業の果たす役割や魅力を伝え、興味を高めるのが狙いで、「土木と建築ってなに?」「探検しよう!いきものにぎわうまち」の2つで構成し、子ども心をくすぐる内容となっている。  「土木と建築ってなに?」では、土木・建築の基礎知識をスライドショー形式や一問一答形式で学べるコーナーに加え、夏休… Read More
  • 【LIXIL】家の中でも事故のない暮らしを! 小学5、6年生対象の安全教材を無償配布 LIXILは、小学5、6年生を対象とした教材「安全教育授業プログラム-家の中の安全を考えよう」を製作した。学校教員や教育機関関係者を対象に、無償で配布する。  この教材は、事故のない安全な暮らしを送ってもらおうと、特殊能力で危険を予知できる主人公と一緒に、家の中の事故を未然に防ぐ方法を考える内容のDVDや、自宅の危険を見つける発展課題型のワークシートなどを取りそろえている。教師のための指導手引きや、スライド資料もセットになっている。 申し込… Read More

0 コメント :

コメントを投稿