2016/04/10

【YKKAP伝承塾】サッシ職人を確保せよ! 最短6年でスペシャリストに育成


 慢性的な職人不足に悩まされているビルサッシ業界。サッシ職人数はピーク時から4割減との試算もあり、人材確保は喫緊の課題だ。YKKAPが施工協力会と連携し、若手技能者の育成を目的に「施工技能修練伝承塾」をスタートしたのは3年前。一人前になるまで10年と言われる育成期間を6年に短縮することが狙いだ。同社営業本部ビル建材技術部施工技術部業務・安全グループ長の横山剛久氏は「伝承塾が受講生のモチベーション維持にもつながっている」と強調する。

 戸建て住宅には製品の提供だけにとどまる同社だが、マンションやオフィスなど非木造分野では材工で請け負い、取り付けを担う施工協力会社とは二人三脚の間柄だ。現在490社が加盟する「YKKAPグループ施工協力会」が発足したのは1992年。絆を強くしてきたが、職人の高齢化や入職者の減少により、年を追うごとに職人の不足感がまん延してきた。
 協力会加盟会社が抱えるサッシやカーテンウオールの職人数は現在約2500人。製品種類が多岐にわたり、しかもミリ単位の取り付け精度が求められるだけに、一人前の職人になるまでには最短でも10年の実務経験が必要と言われている。ほかの工種に比べ育成に時間がかかり、短期的にスキルの高い人材を増やすことは難しい。東京五輪を契機に、2020年までは都内を中心に建設需要が一気に拡大する見通しの中、ビル事業の強化を打ち出す同社では、事業拡大に対応できる施工体制の確立が経営の重点テーマでもある。
 営業本部ビル事業企画部長の羽馬隆人氏は「サッシ職人の絶対数が少なく、特に秋口と年度末の仕事が集中する際には取り付け日時を微調整しながら、なんとか乗り切っているのが現状」と明かす。日々忙しい施工協力会社では親方が若手の指導に時間をかけられないジレンマもあり、両者にとって人材の育成は避けて通れない共通の悩みだ。
 「技能レベルに応じたスキルアップが確立できれば、育成期間も短縮できる」(横山氏)。13年春からスタートした施工技能修練伝承塾の受講生は延べ127人に達する。3日間の集中研修によって技能スキルの向上を図るもので、技能レベルを初、中、上級の3段階に区分けし、2年おきに順を追って受講すれば、最短6年間でスペシャリストのレベルまで到達するものだ。

受講生は延べ127人

 受講生は同社の滑川製造所(富山県滑川市)に集められる。技能レベルに応じて3コースに分かれるため、10代の若手から既に経験を積む40代の技能者が参加するケースも少なくない。技能講習は基本スキルを中心に学ばせるのが原則だ。技術的なテクニックは普段の現場で身に着けているため、あえて基本を丁寧に教え込むことで頭の中を整理させる狙いからだ。受講生は1コース当たり最大16人で、毎回40人強が参加している。
 13年度の開講時に初級を受講した若手技能者は2年間の実務経験を積み、15年度に中級、17年度には上級を受講する流れになる。15年度の研修で、中級を受講してきたのは2年前の初級受講生の半分ほど。残念ながら残りは離職してしまった。「この状況をどう判断するかは難しいが、残る中級の受講生たちのモチベーションは高い」とは横山氏。職人不足は離職者の増加も原因の1つだけに「伝承塾が受講生同士の横のつながりを生み、2年後にまた会おうと、誓い合う団結心が次へのモチベーションになっている」と考えている。
 施工協力会は、15年7月に若手技能者を対象にした「青年部」を発足させた。参加者は40人を超える。その大半が伝承塾の受講者たち。羽馬氏は「同年代であれば、仕事の悩みも喜びも共有できる。コミュニティーの広がりが、離職防止につながっていけば」と期待する。塾の講師役は施工協力会社のメンバーが務めており、当初2人だった体制は15年度に3人、16年度からは4人体制に拡充する。塾スタート時に初級コースを学んだ受講生が、上級を受講するのは最短で17年度。同社は「受講生がいつか講師として教える立場に成長してほしい」(羽馬氏)と期待している。
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