2016/05/25

【ダム本】鳥の目と音で楽しむ写真集『ダムに行こう!』と、庄内の生活とダムを描く『月山ダム物語-ダムは思想する-』


◆日本ダム協会首席研究員 廣池 透氏おすすめ!『ダムに行こう!』(萩原雅紀、庄嶋與志秀著)
 ダムマニアとしてダムの情報を発信し続けている萩原雅紀氏と、ドローンでのダム撮影のパイオニア、庄嶋與志秀氏がタッグを組んでのダム写真集。庄嶋氏のドローンによるダム空撮DVDの付録付き。

 ここ10数年、ダム愛好家が増えてきている。ダム巡りという新たな趣味の一分野もすでに確立されたといっていいだろう。それに伴い、ダム愛好家のための種々の関連書籍が発行されているが、現時点で最も新しいのが、この「ダムに行こう!」である。86基のダム写真と、14基のダムのドローン撮影。これまでの「ダムの空撮」とは異なり、近年急速に発達してきたドローンでの撮影は、ヘリやセスナとは視点場が異なり、まさに「鳥になった」感覚での映像が楽しめる。「音」にもこだわりがあり、画像なしで聞くと、ただのホワイトノイズにも聞こえる放流音が、画像と合体するなり、圧倒的な臨場感を伴ってくる。
 ダムについては、専門用語の説明の後、型式順に写真で紹介され、初心者でもダムについて理解しやすく作られている。また、萩原氏ならではのダムの楽しみ方も紹介され、「ちょっとダムを見に行ってみようかな」とついつい思ってしまう、そんな写真集である。
(学研プラス、2000円+税)

◆東北地方整備局月山ダム管理所長 槻山敏昭氏おすすめ!『月山ダム物語-ダムは思想する-』(水戸部浩子著)
 月山ダムが管理に移行してことしで15年目を迎えます。そこで本書をご紹介します。本書は、水戸部浩子さん(元荘内日報社論説委員)が、月山ダム建設に関わる地元の人々、そこで働く人々の、笑い・喜び・悩み・気概を、庄内独特の歴史文化を踏まえながら、書き綴っています。
 「なぜ、ダムに興味を持ったのですか」と、一時は会う人ごとに訊かれたそうです。新聞連載終了後は、予想に反し建設関係者だけでなく、自営業や広範囲の職種の人々から多く声を掛けられたそうです。「大それた論理より日々の生活を紡いだことが、気楽に読んでもらえた理由なのかもしれない」と書かれています。
 人を愛し自然を愛し、庄内を愛した水戸部さんが、長きにわたるつぶさな取材により、故郷を思う人々の日々を紡いだ想いが描かれているからだと思います。
 山田洋次監督も序文を書かれています。のちに藤沢周平映画3部作を鶴岡で撮影することになりますが、監督が鶴岡を知るきっかけをつくった1つが、実は水戸部さんのこの1冊だったと伺っています。皆様も、月山ダムを眺めながら、ぜひ庄内へお越し下さい。
(みちのく書房、上巻2858円+税、下巻3000円+税)
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