2016/05/28

【陶芸家×建設業界】焼物文化の真髄を現代建築に 陶芸家・加藤令吉氏と丸勝の挑戦


 陶芸家・加藤令吉氏=写真=が建設業界に新風を吹き込む。自然界が持つ壮大なエネルギーや人を思う大切さ、一期一会の作品を首都圏の住宅や公共施設に広めようとする動きである。加藤氏と価値創造型企業を目指す丸勝(本社・千葉県柏市、福田理佳社長)が、平成の世に必要な精神文化を築くために連携。1200度以上の炎を操る陶芸家の技法と思いを現代に打ち出す。陶彩板などを「設置場所、大きさなど、オーナーの好みに合わせて、すべてフルオーダーによる陶彩作品を提供したい」と加藤氏は語る。

 「かつて安土桃山時代に千利休が創り出した茶室は、現在の住宅建築(数寄屋建築)に取り入れられた。客人をもてなす床の間が消えゆく今、日本家屋に「土もの」を取り入れる。すなわち現代のリビングや玄関などに、日本人の心である安らぎ、もてなす空間を設けるのが平成文化を築く今回の新たな取り組みである」

壁面に設置された陶彩板 450×1350ミリ

 「近年、日本文化が見直されているにもかかわらず、タイルは地震や老朽化による落下もあり危険と騒がれ、タイル業界全体が沈滞化してきた。一方、飛躍的な技術開発などにより、安全性や耐久性に優れた建築金物や接着剤が生まれ、約50cm角、厚さ2cm、10kg程度の陶彩板を難なく壁面に張り付けることが可能となった。陶彩板をインテリアとして部分的に装飾するだけではなく、新たに伝統文化を取り入れた内外壁面の構成、デザインで発信し、業界の多大なる発展に努めていきたい」と加藤氏は情熱を込めて語る。

中京大学名古屋キャンパスの陶彩壁

 「50年ほど、厚みのある陶壁、陶板づくりを作品としてきて、行き着いた点は、より多くの空間デザインに寄与できる新たな陶彩壁と陶彩板である。旧来から続く焼物の概念を乗り越え、次世代文化の表現や可能性を探り、新たな次代を切り開きたい。平成の世で日本の美・和文化をもう一度開花させ、若手陶芸家にも空間をデザインする場の可能性を広め、平成の文化を築きたい」という。

陶彩板 450×600ミリ

 加藤氏のこうした思いに共感し、作家とユーザーとのプロデューサー役を買って出た丸勝の福田円佳専務は、「幼いころから、伝統文化を継承するさまざまな芸術家や美術家と深いかかわりを持ってきた。長じて日々お客さまと接する中、現代の建物にこそ、焼物文化の神髄をオーナーに提供したいとの思いを強めている。石油製品では味わえない本物に接し五感を研ぎすませてほしい」と語る。

陶彩板 600×300ミリ

 設計者やユーザーに合わせて対応するため、丸勝の担うべき役割は大きい。
 「古き良き昭和の時代は終わった。見るだけのインテリアではなく、柔軟な発想により、外壁や庭などを彩る多様な利用方法が考えられれば、日本の素晴らしい文化は必ず継承され、平成の時代に新たな精神文化融合の建築を築ける」と、加藤氏は陶芸の新たなる可能性、展開に意欲を燃やす。かとう・れいきち 慶長年間より約450年続く陶家の22代目。愛知万博のモニュメントの共同制作、大同工業大、名古屋赤十字病院、中京大学名古屋キャンパスのロビーなどの陶彩壁も制作したほか、オブジェ、茶道具、食器など幅広く日本文化の制作活動を展開。日展会員として審査員も勤める。波光会会長、日工常務理事、また、名古屋造形大学の客員教授として後進の育成にも尽力している。
 製品などに対する問い合わせは、丸勝東京支社開発事業部・東京都千代田区東神田1-5-6東神田MK第5ビル3F  電話03-5820-3111、ファクス同8111
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