2016/05/08

【解説】2017年8月に運用開始の「建設キャリアアップシステム」とは


 建設技能者の資格や就労実績を業界統一ルールの下で蓄積する「建設キャリアアップシステム」の構築にゴーサインが出た。これまで“自称”の余地が大きかった職人一人ひとりの技能と経験を「見える化」し、適正な評価に応じた処遇改善に結びつけるのが最大の目的。さらには、優秀な職人を抱える専門工事会社の受注機会の拡大、元請企業の現場管理の効率化なども狙う。2017年3月までにシステムを完成させ、4月から各種情報の登録を開始する。試験期間を経て、同年8月から本運用に移る。まずは大規模工事現場に先行導入し、運用開始後1年間で100万人の登録を目指す。5年後をめどに、所属企業の大小を問わず、すべての技能労働者に普及させたい考えだ。
画像は国土交通省の資料より

 産学官で構成するコンソーシアムの第2回会合が4月19日に開かれ、システムに登録する情報やその閲覧可能範囲、開発の工程表などを含む基本計画書が策定された。
 氏名、住所、生年月日といった本人情報と社会保険の加入状況、建設業退職金共済番号・手帳の有無、保有資格を必須の登録項目とし、健康診断受診歴や労災保険特別加入の有無なども任意で追加できるようにする。企業側が登録する事業者情報や現場情報と組み合わせ、技能者の就業履歴を電子的に蓄積する。証明書の添付などにより、個人登録情報の真正性を確保。証明がなくても登録自体は可能とするが、未証明であることを分かるようにする。

◆能力に応じたカードに現場入場実績を蓄積 

 登録の対象者は、作業員名簿に掲載される技能者を基本としつつ、ガードマンや運転手、清掃員などの技能者以外についても段階的な拡充を検討する。元請けの選択により、監督などを行う技術者も使えるシステムにする。規模や工種にかかわらず、解体や補修、リフォームなどを含む、すべての建設工事現場が登録対象。ただ、小規模現場での利用は当面任意とする。
 現場入場実績は原則としてカードリーダーで蓄積。技能者には能力に応じて色分けしたカードを発行する。臨時のQRコード発行など、カードの盗難・紛失時などにも現場に入場できる機能を実装する。カードリーダーを置けない現場については、ウェブサイトから直接入力できるようにする。
 基本計画書は、建設業退職金共済(建退共)制度との連携にも言及した。現行制度では、元請けがまとめて共済証紙を購入し、それを下請けに交付する「共済証紙現物交付方式」が採用されているが、将来的には建設キャリアアップシステムを証紙に代替することを目指す。

◆具体システム開発へ振興基金内に準備室

 具体的なシステム開発に向け、建設業振興基金内に「建設キャリアアップシステム開発準備室」を近く立ち上げる。関係団体などから常駐者を出し合い、運営主体に求められる体制やシステムの詳細機能、開発・運営費の試算など専門的な検討を重ねる。国土交通省も開発準備推進室を設置し、積極的に関与していく。同省は、導入初期の加速度的な普及を図るため、技能者個人や建設企業が負担する登録料などについて、特別な支援措置を講じることも検討している。
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