電動バイクの製造販売を手掛けるテラモーターズが、ことし3月にテラドローン(本社・東京都渋谷区)を設立し、ドローン(小型無人飛行機)を使った測量事業に本格参入した。ドローン測量は従来の測量方法に比べ、大幅な工期短縮とコスト低減を実現し、施工の効率化に寄与する。国土交通省が3次元測量への導入を打ち出すなど、ドローン測量の需要拡大は大いに期待できる。徳重徹社長は「世界を見ても、まだ圧倒的なプレゼンスを持っている会社はない。そこを狙う」と意気込む。
同社は3年前からドローン測量事業を手掛けるリカノス(本社・山形市)と提携、3次元図面を生成する技術を譲り受け設立に至った。徳重社長は「長期的に考えれば、ドローンはパソコンと同様にコモディティ化(汎用品化)され、サービスやアプリケーションが重要になってくる」と先を見据える。ハードウエア開発を重視せず、あくまで顧客のニーズに沿ったソリューションサービスに力を注ぎ、準備から3次元図面の作成までを一貫して提供する。
対空標識の設置を工夫し、精度を高めている |
現場に出向き、計測する敷地内に対空標識と呼ばれる基準点を設置し、その座標をトータルステーションで観測後、ドローンで空撮して画像を取得する。基準点の座標と空撮写真を画像合成ソフトウエアで組み合わせ、高精度3次元図面を作成し、土量計測などの解析を可能にする。
敷地約2haの場合、地上レーザー測量では約3日、光波測量では約8日の作業時間が必要になるが、ドローン測量はわずか1日で済む。コストも地上レーザー測量の4分の1、光波測量の5分の1まで抑えられる。
デモンストレーションで測量し3次元データ化した仙台市の荒浜小学校敷地 |
3次元図面は精度の高さも強みの1つだ。対空標識の設置方法を工夫したほか、既成のソフトウエアを独自に組み合わせて画像を合成することで、高精度な3次元図面作成を実現した。地上レーザー計測の点群と比べても、測定エリアの大部分が5cm以内の誤差で収まっていることを実証済み。5月からはドローンによるレーザー測量サービスの提供も始めた。
事業開発部の河越賛氏は「建設現場でのドローン活用の可能性はいくらでもある」とし、今後は橋梁などインフラ点検事業への拡大も視野に入れる。現在は社員や提携者を含め30人ほどのドローンオペレーターが全国各地の案件に対応しており、将来的には地方の測量業者にノウハウを提供し、フランチャイズ形式で事業拡大を図るビジネスモデルも考えている。
課題は、サービスの認知度だ。国土交通省が打ち出したi-Construction(アイ・コンストラクション)ではドローン測量の活用を推進し、公共測量のドローン使用マニュアル(案)も策定されるなど、導入には追い風が吹くが、「ゼネコンはドローン活用の準備ができているが、地方建設会社にはまだ具体性が十分に伝わっていない」と河越氏。地方のデモンストレーションを積極的に展開する方針だ。
将来的には、土木測量だけでなくインフラ点検事業へのドローン適用にも期待を寄せる。橋梁点検ではカメラや赤外線によってひび割れの有無などを確認できるドローンの有効性を実証中。河越氏は現時点で近接目視や打音検査が求められるため「ドローンだけでの点検作業は難しい。他の技術と組み合わせた対応が必要」と考えている。
仮にドローンによる点検が実現すれば点検時の車線規制や足場が不要となるため、大幅なコスト削減と工期の短縮に貢献できる。徳重社長は「テラモーターズの得意分野である事業展開スピード、国際展開能力、資金力、人材をフルに使って事業展開する」と力を込める。
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