2016/05/15

【現場最前線】悪天候の中750tのトラスを横取架設! 宮城県新北上大橋は6/10に完全復旧へ


 川田工業が宮城県石巻市で施工している新北上大橋災害復旧工事のピークとなる部分流出したトラスの横取架設が4月28日から30日にかけて行われた。雨と強風の悪天候にもかかわらず、寺島太郎作業所長を先頭に現場が一体となり、慎重に作業を進め、床版まで組み立てた重さ約750tのトラスを軌条とジャッキで横取降下させた。工事着手から2年あまり。2カ月近い全面通行止め期間を経て、6月10日に完全復旧した姿で再開通する。写真は構台上に設置した軌条から13.6m移動させる様子。

 1976年に供用した新北上大橋は、長さ約565.7m、幅6.5mの7径間下路式鋼トラス橋。河口から約4㎞離れた最下流で両岸を結ぶ交通の要所だったが、2011年3月11日に起きた東日本大震災の津波で左岸側の2径間が流出した。これに伴い、10㎞ほど上流にある国道45号まで合わせて約23㎞もの迂回(うかい)を強いられ、救命や救援に支障をきたした。同年10月には仮設橋で復旧したものの、7径間のトラスのうち、落橋した2径間だけを復旧する難工事が残った。
 同工事を宮城県から受注した川田工業の寺島所長は、14年3月に現場に乗り込んだ。同年5月から補修工事に着手し、落橋した2径間のうち、A1-P1間は15年8月に完了させた。残るP1-P2間の構築に当たっては、橋脚と横取設備を一体化させるベント設備を採用した。上流側に設置した構台で本体を組み立て、床版まで施工することで、全面通行止め期間を当初想定していた6カ月から2カ月程度まで大幅に短縮させた。
 主製作部材は同社の富山工場(富山県南砺市)で製作・陸上輸送した。現道から13.6m離れた横取架設開始位置で床版工までを施工した。27日までに横取軌条と鉛直ジャッキ、スライドジャッキ、操作・計測装置を組み立て、移動量や反力を確認しつつ、調整しながら試験移動で6mほど移動させた。
 本番となった28日は、大雨と強風という悪天候を考慮して、当初の午前8時30分から1時間遅らせて9時30分に18人の作業員がそれぞれ持ち場について、作業を開始した。

横取架設が完了して1本につながった新北上大橋

 寺島所長は荷重差を5%以内に制御するため、無線で頻繁に連絡を取りつつ、目視などを行いながら、慎重に装置を操作した。1mずつ進めるごとに確認作業を行い、最終移動作業では作業員がわずかな誤差も生じさせないように慎重に計測を繰り返し、微調整した。2時間あまりの作業が完了すると場内には安堵のため息と歓声がわき起こった。
 スライドジャッキや軌条などを解体した後、30日に約1.3mの高低差を解消する扛下(かきおろし)を実施。桁調整を経て、横取・扛下作業を完了させた。
 寺島所長は、「緊張感があったものの、正直なところ安心した。引き続き宮城県東部土木事務所と会社の支援を受けて工事を進めていく。1日も早く車道通行を確保し、関連する地域への影響を最小限にしたい。着工から2年以上過ぎるが、安全と品質を確保し、無事故・無災害で復旧・復興の象徴の1つと言えるこの工事を完成させたい」と話している。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【大学生が取材!】BIM、タブレット利用で効率化 勝どき五丁目・日本最大級のタワーマンション建設現場 東京・ベイエリアの新たな都市型居住空間として建設が進む「勝どき五丁目地区第一種市街地再開発事業」。約1400戸を誇る超大型タワーマンションの建設が、作業員約600人体制で進められている。現場では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やiPadなどの先端技術を駆使して、大人数での施工の円滑化に取り組んでいる。設計施工を担当する鹿島の作業所(岡田広行所長)を、東洋大学大学院理工学研究科博士前期(修士)課程のビルディングシステム… Read More
  • 【現場最前線】早期運転再開へ現場一丸 JR常磐線小高駅~磐城太田駅間災害復旧  東鉄工業は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で不通となっているJR常磐線・小高駅~磐城太田駅間(福島県南相馬市)の列車運転再開に向けた鉄道施設災害復旧工事および除染作業を進めている。現場ではバラストに使われている砕石を交換する除染作業(道床撤去・復旧)とレールの調整などを実施。早期の運転再開に向け、所員が一丸となって作業に当たっている。  工事は「いわき保線技術センター管内災害復旧(太平洋地震)そ… Read More
  • 【現場最前線】現場からのアイデアで工期短縮 PCaPC工法で進む東洋水産福岡物流C新築 福岡市の先進的モデル都市・アイランドシティ。臨海部物流拠点の機能も担う同地の一画でPCaPC(プレキャスト・プレストレストコンクリート)工法による冷蔵倉庫の建設が進んでいる。施工を担う西松建設の安井豊作業所長は「現場がきれいに保たれ、工程どおりに進捗する。足場をほとんど組まないため、危険要素が少なく、在来工法に比べて安全」と手応えを感じている。  この「(仮称)東洋水産福岡物流センター新築工事」は、冷蔵倉庫棟、アイス棟、事務所棟の3棟を… Read More
  • 【現場最前線】作業は1日わずか2時間! 時間と戦う東京駅5・6番線ホーム屋根改修工事 東日本旅客鉄道(JR東日本)東京支社が進める、東京駅5・6番線ホームの屋根改修工事がほぼ完成した。施工を担当する東鉄工業は、オール夜間工事で1日に確保できる作業時間がわずか2時間余りという厳しい条件下で高い技術力とノウハウを発揮し、安全で高精度な施工を実現した。改修に当たっては、1914年の駅開業時から約100年間、屋根を支え続けた鋳鉄製の柱を撤去・移設し、モニュメントとして保存している。  ホームの屋根改修は、「東京駅第二乗降場上家改修… Read More
  • 【現場最前線】上棟間近! 回遊性高い九州最大級のオフィスビル『JRJP博多ビル』 九州の玄関口、JR博多駅に近接する博多駅中央街南西街区に九州旅客鉄道(JR九州)と日本郵便(JP)が『JRJP博多ビル』の建設を進めている。低層部に商業施設を配する九州最大級のオフィスビルで、2016年春の開業を目指す。隣接して工事が進むKITTE博多とともに、地下通路とペデストリアンデッキで博多駅と直結する。JR九州事業開発本部開発部オフィスビル開発プロジェクトの森義由紀課長代理は、「これらに加え、各ビル1階の貫通通路もできる。動線が増え… Read More

0 コメント :

コメントを投稿