2016/05/27

【建築】有形文化財の聖心女子大パレス、和風建築の趣残し耐震化 清水建設


 清水建設の施工で整備を進めていた東京都渋谷区の聖心女子大学パレス耐震補強工事が完了し、26日に報道陣に公開された=写真。国の登録有形文化財にも指定された和風建築の趣を残しつつ、屋根の軽量化や構造補強壁の設置で安全性を高めた。また、土台などの不陸調整や、雨水による腐食部分の接ぎ木なども実施。清水建設の藤沢雅人工事主任は、今回の工事について「耐震補強工事がメーンだが、文化財としての価値を損ねないように意識した」と振り返った。

 パレスは、旧久邇宮邸の御常御殿として建てられた木造2階建て延べ約600㎡の東棟と、食堂などに使われていた木造平屋建て約330㎡の西棟からなる。御常御殿は、新宿御苑台湾閣などを手掛けた森山松之助が設計し、1924年に完成。49年には大学の1号館校舎建設に当たり、御常御殿を現在の場所に移築し、西棟と廊下でつないだ。現在でも課外活動などで使われているが、老朽化が進んでいたほか、耐震診断で倒壊の可能性を指摘されたため、文部科学省の施設整備補助金を得て、耐震工事を実施した。
 工事は2015年3月に設計が始まり、ことし3月に完了した。屋根瓦の更新では、従来より一回り大きい規格の瓦を採用し、重ねしろ部分の重量を軽減。1㎡当たり約57㎏から約45㎏まで軽量化した。あわせて、瓦の下に防水シートを敷くことで防水性能も向上させている。また、当初は下屋部分に鉄板葺きを採用する予定だったが、施工中に、かつて銅板葺きが施されていた痕跡を発見。大学と協議し、建設当時を再現する銅板葺きを採用した。

格子状の補強壁

 壁補強では、既存土壁の約150カ所を耐震構造壁にする工法を採用。構造用合板、プラスターボード、格子壁の3種類の補強壁を使い分けて補強した。作り付けの書棚など内装を損なうことなく耐震性が向上した。また、床下には筋かいを設置したほか、柱頭と2階の梁の接合部分を金物で補強した。
 キャンパス内という特殊な現場条件のため、入試期間中は作業を完全に停止。また、仮設屋根が掛けられなかったため、1日の工事が始まる際には防水シートをはずし、終了時には再び掛けるといった手間もあった。そのような厳しい条件下でも、スケジュール管理を徹底し、工期どおりに工事を完了させた。
 聖心女子大の加納博義施設主事は補強工事を終えたパレスについて「本物の文化施設を日常的に学生に使ってもらいたい」と話した。今後、大学では一般公開も検討している。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【アーキエイド】牡鹿半島の復興支援を活動報告 東日本大震災に対する建築家の復興支援ネットワーク「アーキエイド」は、東京都港区のSHIBAURA HOUSEで「牡鹿半島アーキエイド・ミニキャンプ2013活動報告会」を開いた。全国の大学から宮城県牡鹿半島の地域支援に参加した学生たちが1年間の活動内容を発表、牡鹿半島の“いま"を伝えた。  冒頭、東北工大講師でアーキエイド設立発起人の福屋粧子氏は「復興は新しいフェーズを迎えた。瞬間的な花火のような活動から、かがり火のように長期にわたって継続する… Read More
  • 【建築】銀座で卒業生100人の展示会 東京都市大建築学科 東京都市大学建築学科の同窓会「如学会」と同大建築学科は、さまざまな分野で活躍する卒業生の取り組みを紹介する「建築100人展2013銀座展」を22日まで東京・銀座のタチカワブラインド銀座スペース「Atte」で開いている。デザイン・設備・構造・施工などの分野から100人以上の卒業生の成果が展示されている=写真。  オープニングパーティーであいさつした如学会会長で建築家の山岡嘉彌氏は「以前は組織事務所が担当する国内の大規模建築を中心に展示していたが… Read More
  • 【グッド・ペインティング】新築最優秀はキッコーマン総合病院に キッコーマン総合病院 日本塗料工業会(酒井健二会長)、日本塗料商業組合(礒部進理事長)、日本塗装工業会(多賀谷嘉昭会長)で組織するグッド・ペインティング・カラー委員会は、「環境色彩コンペティション・第16回グッド・ペインティング・カラー」(協賛・日刊建設通信新聞社ほか)の入賞作品として3部門計10件を選定した。 東京理科大神楽坂キャンパス 最優秀賞には新築部門で「キッコーマン総合病院」(千葉県、受賞代表者・竹中工務店の藤田純也氏ほか… Read More
  • 【建築甲子園】士会が神奈川工高を表彰 県大会で優勝・準優勝 表彰されたみなさん 神奈川県建築士会は19日、日本建築士会連合会と都道府県建築士会が主催する第4回高校生の「建築甲子園」で神奈川県大会の優勝と準優勝に輝いた県立神奈川工業高等学校の生徒計7人に表彰状と記念品を贈呈した=写真。制作を担当した國島かほり教諭は印刷などの課題を挙げつつ「アイデアは素晴らしく、学生らしい作品になったと自負している」と生徒を誇り、全国大会入賞に期待を寄せた。  同神奈川大会では、同校建設科3年生の竹内滉介君、遠藤雅治君… Read More
  • 【建築】京都女子大の女性視点で団地リノベーション 都市機構 都市再生機構西日本支社と京都女子大学が進めてきた洛西ニュータウン団地リノベーションプロジェクト(京都市西京区)として、住戸のリノベーション(計8戸)と階段室の美化が完成した。13日に報道関係者に公開した。両者は4月から取り組みを本格化し、京都女子大家政学部生活造形学科の井上えり子准教授と同学科の学生たちが若い女性の視点から団地を見直した。2014年1月25日から2月2日に内覧を行い、3月からの入居開始を予定している。  洛西境谷東団地4戸と洛… Read More

0 コメント :

コメントを投稿