2015/02/21

【TOPランナー】大規模建築物支える免震ゴム、柱荷重3800t! 最適な構造躯体を実現可能に

免震装置が大型化している。ブリヂストンが販売を始めた免震ゴムは直径が国内最大の1800mm、柱荷重は3800tにも達する。インフラ資材事業企画部の西田淳一部長は「最大荷重を大幅に引き上げたことで、高さ150m級の超高層ビルに対する設計の自由度は格段に高まった」と自信満々に語る。既に数物件で採用の検討が始まっているという。

 同社によると、超高層ビルへの免震ニーズが広がり始めたのは10年ほど前。そのころに40階建てで採用された同社の免震ゴムは直径1600mm、柱荷重3000tとなり、これがこれまでに設置された免震ゴムの最大サイズになる。新製品の採用が決まれば、径では200mm、荷重では800tもの記録更新となる。
 建築物の大規模化に伴い、免震ゴムの大型化は進んでいるが、単にサイズアップしただけではない。インフラ資材開発部の室田伸夫部長は「重要なのは径の大きさではなく、荷重性能の部分であり、ここに技術のノウハウが集約されている」と強調する。免震建築の黎明期は、免震ゴムの面圧性能が1平方cm当たり60㎏だったのに対し、現在は150㎏に倍増している。
 ゴム層と鋼板層を交互に積層する免震ゴムは、上下の垂直方向に硬く、左右の水平方向に柔らかく機能する。径をそのままに荷重性能を上げるにはゴムの層を薄くし、逆に鋼板を厚くする措置が講じられるが、技術的にはゴム層がへたらず、しっかりした状態を保てるかが重要になってくる。
 免震ゴムは、ゴム層と鋼板層を熱と圧力で加硫させながら、層を形成する。ゴムの弾性力はこの加硫の調整によって増す。径が大きくなれば、より均等に加硫させる工夫が求められる。同社が国内で初めて免震ゴムを納品したのは1983年。RC造2階建て住宅への採用が起源になる。室田部長は「積み重ねた長年の経験をもとに、免震ゴムの製造技術と評価技術を確立してきたが、このベースにはタイヤの技術ノウハウがある」と強調する。
 これまでに4万8000基を超える免震ゴムを納入し、販売シェアで5割を誇る同社だが、建築物にとっては「免震自体が付加価値製品に受け取られ、しかもコスト増を生むという印象が拭えない」(西田部長)ことから、需要動向は景気動向に左右されやすい。東日本大震災以降は企業のBCP(事業継続計画)意識が高まり、売上げベースでは前年比10%以上の2桁成長を続けている。最近は、都心部で湾岸エリアを中心に計画される超高層マンション、郊外では大型物流倉庫へのニーズが拡大し、大型免震ゴムのニーズは一気に高まり始めた。
 開発した直径1800mmの免震ゴムを、米国まで運んだのは1年ほど前。荷重性能レベルが高いため、日本国内では性能確認ができず、カリフォルニア大学サンディエゴ校で試験を行い、計画どおりの性能を確認。免震ゴムは出荷時に性能検査が求められることから、新製品の市場投入に合わせ、横浜工場に大型の試験機を導入中で、6月までには稼働させる予定だ。
 免震のニーズは大型建築だけでなく、中規模にも広がりつつある。同社は免震ゴムのメニューを充実させ、他社との差別化を図っている。高減衰ゴム系や天然ゴム系など5種類のラインアップからサイズを選べるため、品目数はざっと100種類にも及ぶ。免震の裾野は広がり、これまで採用経験のない設計者にも最適なプランを導き出してもらうため、構造計算ソフトと連動した支援ソフトの無償提供も進め、既にダウンロード数は数百に達している。

免震体験車でニーズの掘り起こしも
建築主には、免震構造と耐震構造の揺れの違いを理解したもらおうと、免震体験車を導入し、ニーズの掘り起こしにも力を入れている。「免震はコストアップの要因でない。採用の仕方によって、最適な構造躯体を実現でき、結果としてコストダウンのメリットを生み出せる」(西田部長)。同社の挑戦は続いている。
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