2015/02/06

【記者座談会】「賞」にまつわるあれこれ 建設分野初の日本国際賞/変化した日本建築大賞

A 年明けから明るいニュースがあったね。
B 国際科学技術財団の日本国際賞を高橋裕東大名誉教授=写真左=が受賞したことかな!。この賞は1985年からスタートしたが、建築、土木を含め建設分野では初めての快挙だ。審査委員長の小宮山宏三菱総合研究所理事長は、「国内外の学者、研究者約1万3000人に推薦を依頼して、『資源、エネルギー、社会基盤』分野は152件あった」と説明していた。国際的にも高い評価を受けているわけだ。受賞の決め手について審査委員の池田駿介東工大名誉教授は、「概念を発表された人はいるが、先生は実践されたということが大きな成果だ」と話していた。

A 発表の記者会見はどんな様子だった。
C あまり大きな部屋ではなかったが、テレビ局も来ていて満員だった。「医学、薬学」分野で米国と仏の科学者が受賞したので、海外の科学雑誌の記者も出席して質問していた。高橋先生は受賞のあいさつで、「わたしの専門は河川工学だが、なかなか理解されない。化学繊維の工学かと聞かれることもある」と切り出した。別に自虐ギャグを飛ばしたわけではなく、流域管理や治水哲学などは写真やグラフで現せない抽象的なもので「聞けば聞くほど分からなくなるものを取り上げてくれて感謝している」と言いたかったからだ。河川工学は水害防止や水資源開発などで重要だが、地味な学問のため、ここに光を当ててくれたと率直に喜んでいたのが印象的だ。1月29日に記者発表があったが、その前日が88歳の誕生日だった。
D 以前にインタビューしたことがあるが、「そんなことも知らないで来たのか。もっと勉強しなさい」としかられた。厳しい先生で、おもねることなく、信念を曲げない人でもある。地元静岡のテレビ局は、夕方のトップニュースで受賞を報じていたそうだ。
 
A 賞といえば、日本建築家協会(JIA)のJIA新人賞も発表された。ことしの作品はどんな特徴があるだろうか。
E 原田真宏さん・麻魚さんが設計した「Shore House」は、神奈川県真鶴町の海を見晴らす別荘だ。以前、自宅を原田さんに設計してもらった人に話を聞いたところ、「簡単な操作で、これまでにない空間を生み出す」設計だったと評していた。受賞作もシンプルな作品だけど、論理的に考え抜かれた設計というのが大きな特徴だ。
A 永山祐子さんの作品はどうだった。
F 「豊島横尾館」は瀬戸内海の豊島にあるグラフィックデザイナー・横尾忠則氏の美術館だ。古民家3棟をリノベーションした美術館で、薄暗い展示室を抜けると赤を基調とした極彩色の庭園が広がる空間体験が大きな特徴だ。また、島民の葬儀もできる設計になっていて、隣り合う「生と死」をテーマとした横尾ワールドに建築の立場から応えている。同じ島には西沢立衛氏の「豊島美術館」、隣の直島には安藤忠雄氏の「地中美術館」もある。
A ところでことしの日本建築大賞はどうなったの。例年は新人賞と同じ時期に発表されていたけれど。
E 14年度から日本建築大賞はJIA日本建築大賞、協会賞はJIA優秀建築賞にそれぞれ名称を変えたんだ。JIAは13年度に公益社団化してから各賞の応募条件を拡大して、会員以外も応募できるようになった。名称変更には、公益社団法人として「建築家に向けた賞」から「JIAが選ぶ賞」への変化があるようだ。JIA日本建築家大賞の公開審査会は22日に開かれる予定だよ。
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