2015/02/19

【JIA新人賞】「光」を演出し「境界」生み出した古民家リノベーション 豊島横尾館

瀬戸内海に浮かぶ豊島に建てられた美術館「豊島横尾館」がJIA新人賞を受賞した。集落にあった古民家3棟をリノベーションし、アーティスト横尾忠則氏の作品を展示する。設計した永山祐子氏(永山祐子建築設計)は、「横尾作品に通底するテーマである『生と死』に着目し、その境界となる美術館を目指した」と振り返る。アートと建築の新たな可能性を探ったその設計について永山氏に聞いた。写真は横尾氏の作品が並ぶ中庭(photo:表恒匡氏)。


 「豊島横尾館」でまず目を引くのは、入り口に設置された巨大な赤い硝子板だ。空間そのものを赤く染め上げる鮮烈な色合いだが、「生と死」「日常と非日常」を隔てる境界を演出すると同時に、「展示した作品をより印象的に見せるため、横尾作品を建築体験に置き換えたかった」とその狙いを語る。絵画を中心に展示する美術館だからこそ、3次元の建築の中にある2次元的な体験を重視したという。

「生と死」を分ける境界は赤硝子
アートと建築が融合した空間を実現するため、永山氏が特に工夫を凝らしたのは「光」だった。赤硝子板や黒硝子板といった硝子を使用して「光」を演出することで、時間によって表情を変える絵画的な空間を創出した。「日の入り方により、硝子板は作品を隠すフィルターにも作品を反射するリフレクションにもなる。空間に変化を生み出し、建築と作品を一体化させることができた」という。

「吐く息まで赤く染まる」展示空間
「吐く息まで赤く染まる」。竣工後に「豊島横尾館」を訪れた横尾氏の言葉だ。3次元表現である建築を2次元表現の絵画に近づけようとする取り組みは、横尾氏からも高い評価を受けた。
 設計と同時に重視していたのは、周辺住民に美術館を知ってもらうことだった。 「美術館を地域に活力を与えるきっかけにしたい」という施主の要望に応えるため、 餅巻きイベントを通した説明会や参加型ワークショップを開催したほか、施工中に開かれた国際芸術祭の期間中は建設過程を赤硝子板越しに見えるように配慮した。「突然完成しては住民の戸惑いもあるかもしれないが、 完成まで楽しんでもらえるように心掛けた」と話す。

受賞作品を語る永山祐子氏
「生と死」というテーマを踏まえ、葬儀が可能な機能も備えた。「この美術館は集落の中にあるのが大きな特徴だ。集落で突出せず、しかし埋もれない。美術館であると同時に地域の拠り所となる建築のあり方を探った」という。
 設計中に自身の妊娠・出産も経験した。より強く「生」を意識するようになり、建築への思いも今回の設計を通じて変化したと語る。「建築は物質としてあるものではなく、人の体験の束としてあらわれる『現象』」であり、「これからは建築がその地域でどんな役割を持ち、どんなきっかけを生み出すのかをさらに考えていきたい」と力を込める。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 建築会館(東京都港区)の名物喫茶店「アゴラ」が9日に閉店 店長の吉阪氏とおくさま  「わたしはお客さまにコーヒーをお入れしていただけなのですが、建築家・吉阪隆正の息子ということで、『ここに来てあなたに会えてうれしかった』と言ってくださる方がたくさんおられた。丸10年間、言葉では言い表せない財産をいただきました。女房ともども感謝の気持ちでいっぱいです」  日本建築学会がある東京・芝の建築会館1階に20年ほど続く喫茶「ティー・ラウンジ アゴラ」。厳しい経済情勢から7月9日で閉店することになった。そのマ… Read More
  • 岩国市庁舎など3作品を選出 中国地区の公共建築賞 岩国市庁舎  公共建築協会が主催する第13回公共建築賞の優秀賞に中国地区から3作品が選ばれた。 選ばれたのは、岩国市庁舎、三原市芸術文化センター、岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館(きらめきプラザ)。  5月末に広島市内で開かれた伝達式では事業者・設計者・施工者らに対し、表彰状が贈られた。 3作品の概要は次のとおり(①施主②設計者③施工者)。 ▽岩国市庁舎(山口県岩国市今津町1-14-51)=①岩国市②佐藤総合計画③戸田建設。 三… Read More
  • 愛知県小牧市新庁舎が完成 免震構造で防災拠点化 完成した新庁舎  愛知県小牧市が計画を進めていた新庁舎新築工事がこのほど完成、8日に竣工式を挙行した。17日から使用を開始する。式典には山下史守朗市長、水谷勉市議会議長始め、衆議院議員、参議院議員、市議会関係者、市民の代表らが出席した。 テープカット  主催者の山下市長は「本市の未来都市像『人と緑かがやく創造のまち』に基づき、未来に輝き続ける小牧市を象徴する庁舎を目指した。人と環境にやさしい親しまれる庁舎という理念のもと、市のシンボ… Read More
  • 山本理顕設計工場に決まる 横浜市立大の新付属校舎設計提案競技 自然エネルギーも積極利用する提案  横浜市建築局は、横浜市立大学金沢八景キャンパス再整備に伴う、新付属校舎(仮称)新築工事設計業務委託の公募型プロポーザルを実施した結果、受託候補者を山本理顕設計工場に特定した。月内に契約する。同社の提案は、学生の姿や活動そのものが大学のシンボルとなる「student office」のコンセプトや機能配置が高く評価された。プロポーザルでは、提案書を提出した17者のうち、5者が1次審査を通過した。次点は湯澤建築… Read More
  • 災害公営住宅の資格要件見直して JIA東北らが七ヶ浜町長に要望 JIAが提出した要望書  日本建築家協会(JIA)の渡邉宏東北支部長と鈴木弘二宮城地域会長は、宮城県七ヶ浜町の渡邊善夫町長に、災害公営住宅設計候補者選定簡易プロポーザルの参加資格要件の見直しに関する要望書を提出した。  同プロポーザルは、業務対象に小規模な木造戸建て住宅が含まれているものの、「直近10年間、500㎡以上の公共建築について主任技術者として基本設計から実施設計までのプロセス全体にかかわった実績がある者」とする資格要件が設定されて… Read More

0 コメント :

コメントを投稿