2015/02/22

【現場最前線】列車と高速道路が真上を交差 「HEP&JES工法」で挑む石川こ道橋新設工事

東鉄工業・佐藤工業JVが東京都八王子市のJR八高線北八王子~小宮間で施工を進めている「石川こ道橋新設工事」で、線路下に非開削で箱型道路トンネルを築造する作業が本格化している。JR八高線と中央自動車道が現場の真上を交差する環境や、線路直下の作業が終電後の約4時間に制約されるなどの厳しい条件下で、高い技術力とノウハウをフル活用し、列車の運行と高速道路の機能に支障を与えることなく、安全を最優先しながら高品質な施工に挑んでいる。

 同工事は、鉄道で分断されている地域交通の利便性向上や道路ネットワークの拡充による国道20号へのアクセス路線の渋滞緩和などを目的とし、東京都が事業化した都市計画道路八王子都市計画3・4・28号のうち、線路横断部を東京都が東日本旅客鉄道(JR東日本)に委託し、東鉄工業JVが受注して施工を進めている。
 列車運行を妨げずに線路下にトンネルを築造するため、立坑を構築した上で1辺90cmの鋼製函体(エレメント)をPC鋼線で引っ張るHEP工法と、個々のエレメントを特殊な継手構造で一体化し、内部にコンクリートを打設して構造物躯体にするJES工法を組み合わせた「HEP&JES工法」を採用している。
 14年11月からエレメントのけん引を開始しており、86mのアンダーパス区間のうち、同工法で36mを施工する。
 線路の変状監視に加え、高速道路への影響を最小化するため、現場では準備工の段階から傾斜計、沈下計、変位計などの計測装置を仮設物や既設構造物に設置し、常時計測しながら、慎重に施工を進めている。
 当初計画では函体延長は58mだったが、リスク低減と工期短縮を図るため、前後約22mを開削で先行掘削し、函体延長を約36mに短縮した。

松島孝浩氏
現場で指揮を執る狩野正現場代理人(東鉄工業)は「常に現場は安全が異常、危険が通常という意識を持って安全作業に徹してきた。6月末まで毎日、函体のけん引作業の繰り返しとなるが、列車の安全と高速道路の輸送安全を最優先し、万全を期したい」と気を引き締める。
 佐藤工業の松島孝浩工事管理者は「リスクの高い鉄道や高速道路近傍での作業となり、これまで以上に緊張している。所員や協力会社とコミュニケーションを密にし、安全で確実な作業に徹したい」と話す。

板倉満氏
JR東日本から東鉄工業に出向している板倉満工事管理者は「現場の一員として、さまざまな苦労や問題解決方法を直接学ぶことができた。これまで知り得なかったことも経験しながら、大きなやりがいと誇りを感じている」と現場の醍醐味を味わっている。
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