英国ロンドンで開かれたベントレーシステムズの「ザ・イヤー・イン・インフラストラクチャー2016カンファレンス」に日本から参加した早大の嘉納成男教授と大林組は、リアリティモデリング部門でファイナリストに選ばれた。写真は質問に答える大林組の池田氏(左)とみるくるの田村氏
報告したプロジェクトは、プレキャストコンクリートを使用した29階建ての集合住宅で現場クレーンからレーザースキャニングとフォトグラメトリー(写真測量)で点群データと画像データを収集し、現場の状況をモニタリングしたもの。
大林組技術本部技術研究所生産技術研究部主任研究員生産システム担当の池田雄一氏は、日々の作業で起こる変化を効率的に記録する体制を整えたことで「情報化の手順を自動化・効率化し、現場監督の負担を軽減できる」とリアリティモデリングの重要性を指摘する。今後はデータを品質向上、工期短縮、安全確保に生かす方策も検討していくという。大林組をサポートした、みるくる(東京都渋谷区)の田村直子氏も、「3Dモデリングの技術が向上し、以前よりもデータ収集や3D化が容易にできるようになった。これからはそれをどう現場で生かすかが問われている」と語った。
同部門で最優秀賞を獲得したフィンランドの報告では、首都ヘルシンキをレーザースキャンとフォトグラメトリーで3Dデータ化した。同プロジェクトでは3Dデータをオープンデータとして公開し、リアリティモデリングを都市の大規模な調査・開発に生かす可能性を示した。
ファイナリストのデータ |
ベントレーシステムズにとっても、リアリティモデリングはこれからの成長領域として注目する分野だ。チーフプロダクト・オフィサーのブッピンダー・シン氏は「今後はリアリティモデリングへの対応がメインストリームになる」と強調する。
大きなきっかけとなったのはUAV(無人航空機)の活用だ。従来のレーザースキャンで得られる点群データとUAVで撮影した画像を広範囲で収集できるようになり、実用性は飛躍的に向上した。「今後、プロジェクト進行や維持保全などへのさらなる活用を期待している」という。カンファレンスのファイナリストに選ばれた54組のうち15組が何らかの形でリアリティモデリングを取り込んだプロジェクトだったのもそれを物語る。
CEOのグレッグ・ベントレー氏もリアリティモデリングに大きな期待をかける。「これからドローンやIoT(モノのインターネット)をどう活用していくのかという問いに応えるものになる。そしてエンジニアリング、プロジェクト管理、維持管理を大きく進歩させるだろう」と見通す。
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