東洋熱工業が、拡大するリニューアル需要の取り込みを加速させている。機械室などの更新・改修現場はさまざまな設備機器や配管、ダクトなどが錯綜する複雑な空間。3次元(3D)レーザースキャナーとBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を連携させた独自システムにより、苦慮していた図面作成作業の日数を4分の1に短縮したほか、手戻りのない高精度な施工も実現している。写真は3Dスキャナーによる計測
設備のリニューアル案件では、とっかかりとなる現況図が存在しないか、図面があったとしても部位ごとに行われた改修などの実態が反映されていないケースがほとんど。まずは現状把握から始めることになる。
従来は一つひとつの設備をスケールを使って手作業で計測し、現況図を作っていた。現場の状況を知る計測者が、図面の作成者でもあるのが一般的だった。入り組んだ個所などでは採寸漏れも起きやすく、図面作成中に再度現場に出向くことも少なくない。
バブル期に大量供給されたストックが一斉に更新期を迎える中、現地調査にかかる膨大な手間を解消しようと、同社は2013年に3Dスキャナーを導入。現在は2台体制で全国展開中で、これまでに30件の活用実績がある。
技術統轄本部エネルギーソリューショングループの太田敏夫主事によると、モデルケースのある機械室改修案件の場合、従来は現地調査に10日、現況図作成に30日の計40日を要していた。しかし、3DスキャナーとBIMを使えば、現地調査に3日、点群データ処理に4日、現況図作成に7日の計14日で済むという。
点群データ |
エリジオン(浜松市)と共同開発した東熱オリジナルのシステムは、ここからさらに一歩先を行く。計測した点群データから配管や継ぎ手、平面部などを自動抽出してBIMに変換する。現況図作成時に行っていた点群データのトレース作業なども極力なくしたわけだ。これにより現況図作成が3日に短縮されて全体が計10日となり、「作業日数を従来に比べて75%削減できる」(太田氏)という劇的な省力化を実現した。
平面、配管、管継手を自動抽出 |
3次元空間のウオークスルー機能などを使えば、画面上でも現場にいるような感覚を得られるため、現地計測と作図作業の分業化も可能になった。新設機器搬入時の干渉チェックによる綿密な施工計画の立案や、施工後イメージの可視化による顧客との認識共有も大きな効果。属性情報の入った3Dモデルは施工図や竣工図にも引き継がれ、維持管理に至るまでのライフサイクル全般に生かせる。
BIMに変換 |
3Dスキャナーは幅24cm、高さ20cm、重さ5㎏とコンパクトで持ち運びも容易。設置が難しい天井内などは、ハンディースキャナーで点群データを補完する。足場を組んで実施していた高所の採寸作業もなくなり、計測者の安全性向上と肉体的負担の軽減にもつながっている。
さらなる進化にも道筋をつけた。東洋熱工業の強みでもある点群データから部材の自動抽出は、ある程度規格化されている配管などを対象に、既に全体の7-8割を認識する性能を持つが、柳原茂エネルギーソリューショングループリーダーは「現場ごとに形状の異なるダクトやポンプなども、近いうちに自動抽出できるようにする」と明かす。
同グループの島津路郎チーフエンジニアは「社員はもとより世間からの関心も高く、いろいろなところで脚光を浴びている。この技術を使って効率的で質の高い施工を提供し、リニューアル案件の受注拡大を図る」と意気込む。
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