経済成長を続け、伸びしろの大きさにも期待が寄せられるインドネシア。12月上旬、首都ジャカルタで清水建設が施工する複数の現場を取材した。ODA(政府開発援助)や日系企業からの工事受注にとどまらず、現地大手企業からの特命受注案件もある。現地で約40年の歴史という裏打ちがあり、“シミズブランド”が浸透しているためだ。大石哲士国際支店ジャカルタ営業所長のインタビューとともに、現場の最前線をリポートする。画像は特命受注した超高層オフィス「Menara ASTRA」のイメージ。
◆40年の実績が強みに
清水建設は1980年代以降、ジャカルタ中心部でビル建築を多く手掛け、目抜き通りの一帯は「シミズストリート」と呼ばれるほど実績を重ねた。このほか工場やリゾートホテル、マンションなども施工している。一方の土木工事では、LNG(液化天然ガス)タンクや地下発電所、空港などの実績を持つ。
インドネシアでも“市場は生き物”だ。40年もの間、建設市場が安定的に推移してきたわけではない。97年のアジア通貨危機では市場が大きく落ち込み、営業所の規模縮小を余儀なくされた。その後のリーマン・ショックでも建設投資は急減した。
大石哲士国際支店ジャカルタ営業所長 |
2010年ごろから日系企業の工場進出が相次ぎ、建設需要が盛り返した。その後、日系需要に一服感が出てきたところで、「久々に非日系企業のビル建設を手掛けるようになった。過去に築いた人脈や信頼関係、シミズブランドは生きている」(大石営業所長)。
現在は土木、建築ともに旺盛な建設需要が期待されている。数年前まで300人程度だった営業所の規模は、JV雇用の現地スタッフも含め1000人を超え、「手持ち工事の増加に対して、ようやく人員が追いついてきた」。入社1年目から現地入りした日本人社員もいる。一方、「現地スタッフの能力向上が大きな課題だ」という。インターンシップやスカラーシップのほか、公開講座「シミズ・オープン・アカデミー」などを通じ、人材の獲得を目指す。
今後の受注戦略について、建築では「シミズファンを増やし、設計施工の強みを積極的に売り込んでいく」方針だ。土木は、政権交代でインフラ投資の方針が変わったほか、ODA案件も限定的なため、「日系のプラント案件にも注力していきたい」
◆知恵で工期半年短縮
ジャカルタで最も高い261.5mの超高層オフィスとなる「Menara ASTRA」の工事受注には、シミズブランドが貢献した。発注者はインドネシア最大の複合企業であるアストラ・インターナショナル社で、「日本の建築業界のトップランナーに対する期待」(沖和之建設所長)から特命受注に至った。規模はRC造地下6階地上47階建て延べ16万5000㎡で、施工はインドネシアの建設大手TOTAL社とのJV。
躯体の施工が進む |
現場では、創意工夫で契約工期を半年間短縮し、36.5カ月で完成させる計画だ。特に、逆打による地下躯体工事の効率化が大きく寄与している。プラットフォーム階を1フロア下げて大型重機が作業できる空間を確保。さらに根切土を押し当てる仮設壁を設け、汎用重機の足掛かりを構築した上で3台の汎用バックホウを投入した。
沖和之建設所長 |
地上躯体の施工では、「施工歩掛りが日本の半分以下」(沖所長)という問題から、ともにユニット化した鉄筋と大盤型枠を採用し、効率的に設置できるようコア躯体を先行させた。
着工から15カ月が経過したが、無事故を継続している。朝礼では、大型モニターなど使いながら作業員らに安全対策の徹底を呼び掛けている。
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