2016/02/06

【現場最前線】トンネル直上、角型鋼管を敷き詰め作業床確保 武蔵小杉駅の耐震補強


 東鉄工業が進めていた横須賀線武蔵小杉駅付近高架橋の耐震補強工事が完成した。貨物専用トンネル直上での作業となるため、作業床の確保と資機材の落下対策が課題となる中、角型鋼管を敷き詰めて作業床を確保するなど創意工夫を重ねて安全を確保した。

 この工事は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が首都直下地震対策として進めている耐震補強工事の一部。武蔵小杉駅の横浜方面に位置し、地中部に貨物専用の武蔵野線小杉トンネルとなる複層構造の高架橋橋脚に耐震補強を施した。工期は2013年8月26日から15年11月28日まで。
 橋脚は、高さ約1.8-4.1mの円筒形の鉄筋コンクリート柱。それに厚さ9mmの鋼板を巻き、隙間を充填する鋼板巻き工法が24本、また補強した柱と外側の柱を斜め梁で連結させたブレース補強が24カ所となっている。

角型鋼管を敷き詰めて作業床を設置

 一般的な高架橋補強と異なり、店舗利用や一般歩行者などへの影響はないものの、トンネル直上の柱であるため、中段梁上に長さ5m、10cm角の鋼管を隙間なく敷き詰めて作業床を仮設した。き電線から仮設の角型鋼管までの離隔が約1mしかなかったため、鋼管の仮設床にゴムシートを敷き詰めて耐電養生し、さらに合板を重ねて作業の安全を図った。
 作業床の仮設撤去作業は、貨物列車が走行しない夜間の間合いに限られるため、線路内に立ち入る手続きを取り、人力による資材の出し入れを行った。発注者と協議し、コンクリート壁で閉塞している高架橋側壁部に幅約3m、高さ4mの開口部をつくり、鋼板など大型補強資材を搬入して作業効率性も向上させた。

鋼製ブレース施工

 鋼板巻きは、2つの半円形の鋼板を組み合わせ、噛み合せ継手で接合して円形化。ブレース補強鋼材は、400×400mmのH形鋼部材を5分割して搬入し、作業床で組み立て、人力で柱間に設置した。いずれも仮設作業床での作業となったが、作業空間が低く重機類が一切使えないため、チェーンブロックなどの吊上げ機器を使い、すべて人力作業で乗り切った。
 また、作業場所は閉塞された暗い空間内にあり、照明や換気装置を完備するとともに、作業床面の隙間も完全に塞ぎ、列車運行へのリスク対策を確実に行った上で作業した。

資材の搬入

 現場着手時から工事を担当した岡本早記監理技術者は、「店舗利用や一般歩行者などへの配慮が少ない半面、線路直上での作業であり、通過列車に物を落とさないことに細心の注意を払った」と振り返る。その上で、「特に角型鋼管の作業床仮設では、貨物列車の運行時間帯を避け、狭あいな作業個所に少しずつ人力で運搬せざるを得ず、極めて困難な作業だった」とし、「地道な作業に協力してくれた協力会社の従事者や工法提案を理解してくれたJR東日本横浜支社に感謝したい」と約2年間に及ぶ作業を無事にやり遂げた満足感と充実感を語った。
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