2015/10/25

【現場最前線】剛腕「あやめちゃん」!? が活躍する千葉駅改良・駅ビル建替工事


 大成建設が施工する「千葉駅改良・駅ビル建替工事他」で、工事車両昇降用100t移動式構台「メガリフト・あやめちゃん」が大活躍している。地上にほとんどヤードが確保できないという条件下で施工効率化の切り札として導入し、線路上空の人工地盤を転用した作業ヤードへの円滑な資機材搬入に威力を発揮。都市部など十分なヤード確保が難しい環境で現場のコンパクト化と工期短縮を両立する試みとして各方面からも注目を集めている。

 東日本旅客鉄道(JR東日本)千葉支社発注の同工事は、既存の駅舎・駅ビルをS・SRC造地下1階地上8階建て塔屋1層延べ約7万3800㎡に建て替える大規模プロジェクト。線路上に約1万3000㎡の人工地盤を構築した上で、コンコースを3階レベルに移設して回遊性を高めるなど、新たな玄関口として再整備する。設計は千葉駅改良実施設計他共同企業体(ジェイアール東日本建築設計事務所、ジェイアール東日本コンサルタンツ、大成建設、鉄建)、施工監理はJR東日本東京工事事務所千葉工事区が担当する。
 現場では地上でのヤード確保が困難なため、3階レベルに構築した人工地盤を作業ヤードとして有効活用しながら東側の高層部から先行して作業を進めている。10月初旬段階での進捗率は46%。駅舎部分の開業は2016年秋ごろ、全面開業は18年の夏以降を予定している。
 あやめちゃんは、本社エンジニアリング部門の協力も得ながら、人工地盤の活用とともに資機材搬入の効率化策として施工計画に盛り込み、13年5月に設置した。100tクラスの移動式構台を採用している現場は珍しく、同社で導入しているのはここだけ。
 鈴木達也千葉駅改良・駅ビル建替工事他作業所長(建築担当)は、「資機材を車両ごと地上のヤードに上げてしまおうという発想で導入した」と経緯を説明する。長いスロープを使うことなく資機材をダイレクトに人工地盤上の荷下ろし地点に運べるほか、1ウェイに限られる現場南側の搬入路から計画どおりの搬入を実現するなど、導入による利点は多い。昼夜作業と合わせて工期の短縮に大きく貢献している。


 サイズは幅6.8m、奥行き25m、本体重量90tで、一度に大型トレーラー2台、または4台の生コンクリート車を約10分で12mの高さまで運ぶことができる。1時間に最大12台、約50m3の生コンクリートを遅滞なく搬入することが可能なため、「効率的なサイクルにより、打設するコンクリートの品質が保てる」(鈴木所長)などのメリットもある。
 現場での整備性向上や故障時の復旧対応時間の短縮などを考慮し、昇降の動力源には12台の20t吊り汎用電動チェーンブロックを利用。組み立て・解体作業も簡略化し、搬器の組み合わせによっては66tの積載荷重で使用することもできる。
 現在は昼夜合わせておおむね20-30往復し、仮設資材や生コンクリート車などを運んでいる。来夏以降には仕上げ工事が本格化するため、仕上げ材の搬入などで稼働頻度も上がり、活躍の場面はさらに広がる。
 人工地盤は構造体の保護も兼ねた鉄の覆工板で覆うことで強度を確保している。営業線の真上で作業を進めるため、強風による飛散などの安全対策を徹底し、仮設資機材や荷捌きヤードなどは極力、すでに立ち上がっているビルの建屋内に収納し、いたるところにネットを張り巡らせている。
 現在、現場では所員60人と作業員300人が働く。仕上げ工事が始まれば、作業員は1000人規模に膨れ上がる見通し。鈴木所長は「厳しい条件の中で仕事をしている所員や作業員の頑張りに報いるためにも、関係者の期待に応えられるような建物をつくりたい」と安全確保の継続と高品質な施設の引き渡しに向け、決意を新たにする。
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